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モニタリングで濃密な医療を提供

 遠隔診療では今後、東京女子医大の市原氏が語る“濃密な医療”をいかに実現していくかが、その真価を発揮するためのポイントになりそうだ。こうした観点から、遠隔診療に遠隔モニタリングや人工知能(AI)、モバイルアプリなどの周辺技術を組み合わせ、患者の状態把握や治療介入の密度を高めようとする動きも活発になってきた。

浅草ハートクリニック院長の真中哲之氏は「バイタルサインが取れないという遠隔診療の弱点を補ううえで、ウエアラブル機器や携帯型心電計を併用する方法は有効だ」と話す
浅草ハートクリニック院長の真中哲之氏は「バイタルサインが取れないという遠隔診療の弱点を補ううえで、ウエアラブル機器や携帯型心電計を併用する方法は有効だ」と話す
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 浅草ハートクリニック(東京都台東区)院長の真中哲之氏は、遠隔診療と遠隔モニタリングを組み合わせた、循環器領域の専門外来を立ち上げることを構想している。

 同氏はかねて、心臓ペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)を用いた患者の遠隔モニタリングを活用してきた。12誘導心電図を測定でき、スマートフォンと連携させて測定データをリアルタイムに確認できるポータブル心電計「smartheart(スマートハート)」を利用した診療も行っている(関連記事8)。さらに2016年8月には、メドレーの遠隔診療サービス「CLINICS」を導入した。

 同クリニックには秋田県や沖縄県といった遠方から足を運ぶ患者もいる。こうした遠方の患者などに対して「遠隔診療と遠隔モニタリングを組み合わせた専門外来を提供することで、症状の急変などをいち早く捉え、遠隔で薬を処方したり投薬量を微調整したりして、患者の状態改善につなげられる」と真中氏は期待を寄せる。現在、心臓ペースメーカーなどによる遠隔モニタリングには指導管理料(550点)が算定されているが、今後は遠隔診療と組み合わせた遠隔モニタリングに対する診療報酬上の評価が欠かせないと、真中氏は訴えている。

「対面診療を置き換えるのではなく、遠隔での診療とモニタリングを組み合わせることで診療のレベルを高めたい」と話す国際医療福祉大学 三田病院 肺高血圧症センター 准教授の田村雄一氏
「対面診療を置き換えるのではなく、遠隔での診療とモニタリングを組み合わせることで診療のレベルを高めたい」と話す国際医療福祉大学 三田病院 肺高血圧症センター 准教授の田村雄一氏
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 遠隔診療と遠隔モニタリングの組み合わせを、指定難病の日常診療に既に取り入れたのが、国際医療福祉大学 三田病院 肺高血圧症センターである。2016年8月から、スマートフォンを用いた遠隔診療と、心電図などを測れる携帯型機器による遠隔モニタリングを組み合せた「NAPTEC(NAnbyo Patients TEle-health Care)」と呼ぶ診療を開始した(関連記事9)。

 NAPTECが対象とするのは、指定難病の肺動脈性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症をはじめとする重症心臓・血管疾患の患者だ。これに該当する難病患者が全国で6000~7000人ほど存在するのに対し、専門医は圧倒的に不足している。遠方から足を運ぶ患者を含めて、難病患者に対し「遠隔診療とモニタリングを組み合わせることで、より綿密な(患者状態の)コントロールができると考えた」と同病院 肺高血圧症センター 准教授の田村雄一氏は話す。具体的には「患者の状態に応じて投薬量を調整し副作用を抑えたり、患者が不調を訴えた時にその要因を判定し、来院が必要かどうかを判断したりできる」(田村氏)といった効用があるという。

 遠隔でのモニタリングには、三栄メディシス(京都市)の携帯型マルチヘルスモニター「チェックミー・プロ」を使う。このモニターは2誘導心電図や酸素飽和度、体温を測定でき、測定データはBluetoothで連携させたスマートフォンアプリを介してサーバーに送信される。この結果を担当医が確認し、必要に応じてテレビ電話ツール「Skype」を用いた遠隔診療を行う形だ。月1回といった頻度で通院できる患者に対しては、通院頻度を減らすことは目的にせず、通院の間の状態コントロールをより密に行う手段として遠隔モニタリングと遠隔診療を活用している。

三栄メディシスの携帯型マルチヘルスモニター「チェックミー・プロ」は、片手で持ち、もう片方の手の平に押し当てるだけで心電図を測定できる
三栄メディシスの携帯型マルチヘルスモニター「チェックミー・プロ」は、片手で持ち、もう片方の手の平に押し当てるだけで心電図を測定できる
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 同病院では現在、15人ほどの患者がNAPTECによる診療を受けている。NAPTECを活用することで「不整脈を早期に発見できたり、酸素飽和度の低下などから心不全が見つかり早期の受診につなげられた例もある」(田村氏)という。逆に、患者が不調を訴えてもモニタリングデータから来院の必要はないと医師が判断したケースでは、患者に安心感を与えたり、不要な来院による患者と医師双方の負担を減らしたりすることにつながっている。

 現在は30秒~1分間の心電図を測定しているが、今後はより長時間の心電図をモニタリングする仕組みも検討していくという。ただし、データ量が膨大になるとそれらすべてを医師が確認することは難しくなる。そこで、人工知能(AI)の導入を検討する。AIを活用し、膨大な心電図データから医師が確認すべき危険な兆候を抽出するといった形で、疾患の発症を「予測できるような仕組みを構築したい」と田村氏は話している。