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超拡大内視鏡で病理まで診る

AIを活用した内視鏡診断支援システムの開発を進める昭和大学横浜市北部病院の工藤進英氏(左)と森悠一氏。
AIを活用した内視鏡診断支援システムの開発を進める昭和大学横浜市北部病院の工藤進英氏(左)と森悠一氏。
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 内視鏡で見つけた大腸の病変が、腫瘍か非腫瘍かを判別したり、その悪性度を判定したりする。そうした、より踏み込んだ内視鏡診断にAIを活用しようと挑んでいるのが、昭和大学横浜市北部病院消化器センター長の工藤進英氏と、同センター助教の森悠一氏らのグループだ。超拡大内視鏡(endocytoscopy)と呼ぶ、内視鏡メーカーと共同開発中の新型内視鏡とAIを組み合わせて使う。

 超拡大内視鏡は、内視鏡の先端を消化管粘膜に接触させ、約500倍といった高い倍率の画像を撮像できる内視鏡である。血管の状態や赤血球の流れ、細胞核の大きさや形状といった生きた細胞の状態を、染色も利用しつつ細かく観察できるのがその強みだ。従来は組織を採取する生検が欠かせなかった病理診断を、内視鏡下での観察に置き換えるポテンシャルがあるという。

 工藤氏らは以前から、オリンパスと共同で、この超拡大内視鏡の開発を進めてきた。そしてこの研究を発展させる形で、超拡大内視鏡による診断をAIで支援するシステムの開発に乗りだした。AIを組み合わせることで、診断の精度や効率をより高められるとの狙いがある。「病理医の不足が叫ばれる中、超拡大内視鏡は生検を伴う病理診断を不要にできる可能性がある。治療戦略に直結する情報が内視鏡で得られ、すぐに治療に入れるメリットは大きい。AIも取り入れ、日本発の医療革命として世界へ発信したい」と工藤氏は意気込む。

 研究は日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、名古屋大学大学院情報学研究科教授の森健策氏や、産業用解析ソフトウエアなどを手掛けるサイバネットシステムと共同で取り組む。医療機関からは、昭和大学横浜市北部病院のほか、国立がん研究センター中央病院と同センター東病院、静岡県立静岡がんセンター、東京医科歯科大学の計5施設が参加している。

 このプロジェクトで開発中のシステムでは、超拡大内視鏡で撮影した病変画像から、細胞核の情報を自動抽出。それぞれの細胞核の大きさや形状を特徴付けする。さらに、画像全体のテクスチャー(画素間の濃淡差)からも特徴を抽出する。これら2つの情報を統合し、機械学習を用いて病理診断並みの詳しい診断を支援する仕組みだ。診断と結果表示には0.3秒しか要しないため、内視鏡検査中にリアルタイムに医師を支援できる(動画2)。AI学習用の内視鏡画像は研究に参加する5施設から集めており、既に3万枚以上が集まった。

動画2 昭和大学とサイバネットシステムなどが共同開発した内視鏡診断支援システム
超拡大内視鏡で捉えた画像における細胞核の特徴や画像全体のテクスチャーから、病変が腫瘍か非腫瘍をAIが判定して確信度とともに示す(提供:昭和大学横浜市北部病院の森氏)

 病変の悪性度の判別に使うこともできるが、まずは病変が腫瘍(癌や腺種性ポリープなど)か非腫瘍(過形成性ポリープなど)かを精度よく判定できるシステムの実用化を目指す。腫瘍か非腫瘍かの正診率を今回のシステムで検証したところ、約89%だった。専門医の正診率(91%)と同等レベルで、非専門医の正診率(76%)を有意に上回ったという。

 参加5施設での臨床研究も開始した。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が求める枠組みに従った研究で、今回のシステム、専門医、非専門医によるそれぞれの診断結果を比べる検証を行う。この検証結果を受けて「2018年度に薬事承認申請を行い、早ければ2018年度末にも承認を得ることを目指したい。明確なロードマップの下で研究を進めている」と森氏は説明する。まずは、超拡大内視鏡に診断支援システムを接続する形での実用化を目指す。