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陽子線をキャッチアップ

 建設ラッシュともいえる国内外の状況を後押ししているのは、ここ数年の技術進化である。重粒子線治療は重い粒子を利用するため、陽子線治療に比べて粒子の加速や制御が難しく、そのため装置が大型になりやすい。ビーム照射の自由度も小さく、腫瘍形状に合わせた線量分布設定や治療中の患者の姿勢維持などの点で、不利な点も少なくなかった。

 こうした状況が、ここにきて大きく改善している。治療施設を陽子線に近い水準に小型化できるようになり、ビーム照射の自由度も高まった。これにより、治療施設を都市部の病院に併設したり、症例に応じた適切な照射方法を選べたりするようになった。以下ではその具体的な姿を、山形大学の施設に見ていこう。

東芝と共同開発した回転ガントリーを導入した量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所の新治療研究棟の治療室
東芝と共同開発した回転ガントリーを導入した量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所の新治療研究棟の治療室
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 同施設の最大の特徴は、建屋面積45m×45mというコンパクトさにある。このサイズは「重粒子線治療施設としては記録的に小さい」と、山形大学教授(大学院医学系研究科先進的医学専攻 重粒子線医学講座)の岩井岳夫氏は話す。これに大きく貢献したのが、東芝が納入する予定の非常に小型な治療装置だ。

 東芝は長年にわたり、放医研と共同で重粒子線治療装置の開発を進めてきた。その成果として2016年、腫瘍に対して360度の任意の方向からビームを照射できる回転ガントリー(回転式の放射線照射部)を完成させた(関連記事3)。回転ガントリーでは、脊髄や神経などの重要器官への照射を避けて治療後の障害や副作用を低減しつつ、腫瘍だけに高線量を集中できる。治療台を傾ける必要がなくなるため、患者の姿勢維持の負担も減らせる。

 東芝と放医研が共同開発した回転ガントリーでは、腫瘍の形状に合わせて腫瘍を塗りつぶすようにビームを照射するスキャニング照射も可能。呼吸に伴う腫瘍の動きに合わせて照射する呼吸同期にも対応できる。高精度X線治療や陽子線治療などで実現されてきた自由度の高い照射が、重粒子線でも一般的になってきた。