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治療室と加速器を上下に重ねる

 東芝と放医研の重粒子線治療用回転ガントリーでは、世界で初めて超伝導磁石を採用。これにより、大幅な小型化と軽量化を実現した。

 常伝導磁石を使う従来の重粒子線治療用回転ガントリーは長さ約25m、回転部重量約600トンほど。これに対し、東芝と放医研の回転ガントリーは、長さ13m、回転部重量300トン弱とサイズをほぼ半減させた。これを可能にしたのは、液体ヘリウムをほとんど使わない冷却方式の採用、回転や振動があっても超伝導を保てる磁石内部構造の採用、高速な磁場変化に対応できる超伝導線材の利用、などの工夫である。

回転ガントリーを含む治療室を2階に、加速器を地下1階に配置し、建屋のフットプリントを縮小した(画像提供:山形大学)
回転ガントリーを含む治療室を2階に、加速器を地下1階に配置し、建屋のフットプリントを縮小した(画像提供:山形大学)
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 放医研は2017年5月に、この回転ガントリーを用いた治療(臨床研究)を開始。そして山形大学に納入される回転ガントリーは、これよりもさらに小型・軽量になる見込みだ。

 こうしたメリットを生かして、山形大学の施設では、回転ガントリーを含む治療室を建屋の2階に、加速器を地下1階に設ける構造を採用する。治療室と加速器を上下に重ねることで、水平方向のフットプリントを小さくするわけだ。陽子線治療施設ではこのタイプが浸透しつつあるが、重粒子線治療施設では初採用という。これにより、従来型の陽子線治療施設とほぼ同等のコンパクトさを実現した。

 山形大学では回転ガントリー式の治療室に加え、水平固定式の治療室も設置し、これら全治療室でスキャニング照射を行う。「最近の粒子線治療施設は、陽子線か重粒子線かを問わずスキャニング照射が大きな潮流。我々もスキャニング照射に全力を注ぐ。正常組織への照射を抑えられることに加えて、ビーム照射量を減らせるので建屋の遮蔽厚さを薄くできるといった施設側の利点もある」と山形大学の岩井氏は説明する。

 ボーラス(補償フィルター)やコリメータと呼ばれる、ビーム形状や照射範囲を決めるための部材を不要にでき、部材コストや廃棄物を減らせるメリットもある。このほか、照射位置決めの自動化や呼吸同期のイメージガイド化など、コンピューティング技術を駆使した医療者の作業負担軽減にも力を入れるという。

 以上のような工夫により、「省エネ」「省スペース」「廃棄物ゼロ」「イージーオペレーション」などの特徴を実現。重粒子線治療施設の次世代型“山形モデル”として、世界に発信することを目指している。

 稼働開始までの総事業費は約150億円。内訳は国の予算が66億円、行政(自治体)の支援が30億5000万円、個人・一般からの支援が約8億円、財政投融資の借入が約50億円弱である。