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久保氏:今はネットで検索すればすぐに資料が見つかりますが、東日本震災前までは本当に資料がなくて、新電力への参入障壁は高かったですよね。村谷さんは、どこで電気事業を勉強したのですか?

久保欣也(くぼ・きんや)氏 ビジネスデザイン研究所(BDL)社長
久保欣也(くぼ・きんや)氏 ビジネスデザイン研究所(BDL)社長
東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修了後、東京電力に入社。東電では事業開発部にて新規事業の事業化やM&Aに従事した。その後、ドリームンキュベータにて、全社的な事業拡大戦略の策定支援、技術分野での新事業開発の立案や実行支援を行った。2015年11月にビジネスデザイン研究所を設立。電力分野では新規事業の立ち上げや新電力の経営視点を手がけている。(写真:的野弘路)

村谷氏:太陽光発電の補助金がきっかけでした。行政書士をしていた時、高齢の顧客の元に悪質な業者が太陽光発電を売りに来たんです。これは理論武装しないといけない、と。地元の経済局に足を運んだりして勉強しました。そうしたら面白くなってしまって。その後、エナリスに入社し、需給管理業務を手がけるようになりました。2010年頃ですね。

 久保さんの言う通り、当時は今のように資料が豊富ではなかったので、託送供給約款を読んだり、東電のIR資料を読んだりしました。東電の事業計画をさかのぼって読んでいったら、「一般家庭の自由化は2200年までない」と断じてあったり(笑)。電力会社のネットワークサービスセンターに質問することも多かったですね。すると、「この本を読んでください」と教えてもらえたりしました。勉強するという意味では、逆に良かったのかもしれませんね。

柏崎氏:よく勉強もしないで新電力事業に乗り込んだ人が多い理由は、メガソーラー事業がバブルだったからだと思います。太陽光発電所を所有したことで、「俺は電力会社だ」と勘違いしてしまった。それこそ「発電所を持っているのだから大手電力と対抗しても良いんだ」と。

 こういうマインドで新電力を始めるから、どうしても勉強不足になります。もっと勉強しないといけないし、だからこそ魅力的な業界にしていかないといけない。

新電力はビジネスモデル次第で儲かる

久保氏:電力が通信に似ていると思うのは、ビジネスモデル型の事業であること。電力の場合、50年前に電気料金と電気事業法などの制度を作った人の功績です。それこそ寝ていても儲かるビジネスモデルを作ったわけです。

 新電力もビジネスモデルを作ったら、規模を大きくするのは大変かもしれませんが、すぐに儲かります。やりようによっては、事業規模も大きくできる。夢のある事業だなと思います。

村谷氏:それは同感です。新電力は2年頑張ったら売上高100億円、200億円が不可能ではない。夢がありますよね。もっといろいろな企業にビジネスとして参入してほしいです。

村谷敬(むらたに・たかし)氏 村谷法務行政書士事務所所長、環境エネルギー技術研究所上級研究員
村谷敬(むらたに・たかし)氏 村谷法務行政書士事務所所長、環境エネルギー技術研究所上級研究員
成蹊大学法学部法律学科卒。エナリス、エプコと電力自由化業界での経験を基礎に、電力ビジネスのコンサルティングを行う。これまでに約120社の小売電気事業者のビジネスに携わり、2011年以降では32社のプロジェクトを手がける。地方創生の一環としての電気事業立ち上げにも習熟。北海道から沖縄まで縦横無尽に活動する。(写真:的野弘路)

 ただ、100億円、200億円の次をどうするかが問題。これまで、こういう金額のビジネスをやったことがない経営者が多いので、どんな体制が必要になるのかという感覚に欠けている。10億、20億のビジネスをしていた人が新電力を始めて、突然100億円になると、維持することしかできないから、徹底した保守主義になってしまう。これではイノベーションは起こせません。

久保氏:多くの新電力が、マーケットニーズを捉えられていないと感じます。新電力の人と話していても、聞こえてくるのは大きすぎる話ばかり。再生可能エネルギーとか、それこそ「卒FIT」とか。市場の成熟度の問題かもしれませんが。

柏崎氏:新電力事業を始めた1年目はシンプルにやろう、2年目は武器が必要だよ、と順を追って進めていく必要があると感じています。従業員の熟度が上がってこないと、やれることには限りがあります。シンプルな商材を持ち前の営業力で売るところから始めれば、電気のことを少しずつ理解していきます。そうなって初めて、他社と差別化するための武器を考える余裕がでてくる。