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 そして第3の指摘が「Take or Pay条項(テイクオアペイ)」である。LNG取引では、あらかじめ引取数量を定めているケースが大半だ。買い主の実際の引取数量が減った場合は、その分の代金の全額を支払う義務を負うと定めた条項だ。

 LNGプロジェクトは巨額の初期投資と融資を必要とするため、買い主の安定的な代金の支払保証が投資決定の重要な要素となる。このため、テイクオアペイの規定がただちに独禁法上の問題となるものではない。だが、初期投資の回収を終えているにもかかわらず、十分な協議なしに厳格な引取数量を定め、テイクオアペイ条項を定めることは独禁法上問題となるおそれがあるとした。

 実は、天然ガスの調達に関連する商慣習の見直しは、EUが10年以上、先行している。EUの場合は、主にロシア国営企業のガスプロムとの契約における価格決定方法などがターゲットだった。EUの働きかけによって、罰金や制裁こそないが、売り主が自主的に契約内容を見直してきた経緯がある。

EUより10年遅れだが、EUより踏み込んだ

 今回の公取委の動きは、EUの先例を参考にしているが、さらに踏み込んだ部分もある。公取委の指摘のうち、「仕向地条項」「利益分配条項」はEUも同様の内容を盛り込んでいるが、「テイクオアペイ条項」については日本オリジナルだ。

 LNG取引の商慣行は長年、買い主である大手電力・ガスを悩ませてきた。JERAの佐藤執行役員は、「商談のたびに仕向地条項などの緩和や撤廃を求めてきた。だが、交渉は簡単ではなかった」と明かす。

 仕向地条項を外そうと交渉を持ちかけると、「買い主にとって柔軟性が高まる契約なのだから価格を引き上げる」と言ってくる売り主もいた。だが、公取委の報告書が公表されてからは、「売り主が何か言ってきても『独禁法違反になるよ』と切り返せる。この威力は絶大だ」(JERA佐藤執行役員)。

世界最大のLNG調達量を誇るJERAですら、契約交渉は簡単ではない。ましてや、調達量の少ない中小の電力・ガス会社の場合、より良い条件を引き出す難しさは想像に難くない。

 ここで疑問が浮かんでくる。日本の公取委の判断は、LNGの売り主である海外企業にも効力を発揮するものなのだろうか。