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日本の独禁法で海外企業も規制できる

 独禁法に詳しい西村あさひ法律事務所の藤井康次郎弁護士は、こう説明する。

 「公取委は報告書の中で、独禁法の検討対象マーケットをアジア市場としている。アジア市場に悪影響をもたらす行為は、すなわち日本市場に悪影響をもたらす行為として独禁法を適用することを意味する。国内での転売禁止はもちろんのこと、たとえば、日本と韓国の間で余っている安価なLNGの転売が制限されることも問題となる。さらに、今後、米国からシェールガス由来のLNGが輸入されるときには、対象市場の拡大を検討することになるのではないだろうか」

 資源大手はコンプライアンスへの意識が高い。このため、「日本の公取委の報告書の影響が、LNG交渉の現場に即座に影響を及ぼしている。今後、新規契約から仕向地条項は消えるだろう」(関係者)。

 ただし、「国営企業がLNG輸出を手がけるマレーシアやインドネシア、カタールなどは、公取委の報告書公表後も、頑なな姿勢を崩していない」(関係者)という。

 JERAの佐藤執行役員は、「公取委の判断が出てから、すべての売り主に今回の件を説明した。同時に、アジアの買い主にも説明して回った。買い主の交渉姿勢を変えていけば、売り主も変わらざるを得ない」と言う。買い主が公取委の報告書に沿って、足並みをそろえて交渉に臨むようになれば、従来型の契約では買い手がいなくなる。そうなれば、売り主も姿勢を変えざるをえなくなるというストーリーだ。
 
 そして、佐藤執行役はこう続けた。「LNGが世界的にだぶついている状況もあり、既存契約についても見直しに前向きな売り主もでてきた。変化をひしひしと感じている」。

アジアプレミアム解消への世論の高まりが後押し

 公取委が動いた背景には、LNG取引における「アジアプレミアム」があった。アジアプレミアムとは、主に日本と韓国のLNG価格が他国に比べて割高であることを指す。日本と韓国には国際パイプラインがない。LNGの取引所がなく、価格指標もない。しかも、契約には転売規制(仕向地条項)が付いている。このため、調達価格が割高になる。

 アジアプレミアムが一気に話題になったのは、東日本大震災後だった。東京電力・福島第1原子力発電所事故を契機に、全国の原発が相次いで停止。原子力に変わって電力供給を支えたのが天然ガス火力だった。そのため、LNGの輸入量が急増。ついに燃料費が原因で貿易赤字となり、「3兆円の国富が国外に流出している」という報道が相次いだ。

 仕向地条項などの商慣習はかねて存在していたが、監督官庁である経済産業省には是正に向けた意欲が欠けていた事情がある。「資源外交を経て産ガス国などに『LNGを売ってもらっている』と売り主に恩義を感じているところがあった」とある関係者は明かす。

 LNG開発は巨額の資金が必要なプロジェクトのため、買い主が安定的な購入を約束し、固定費まで負担しているケースも少なくない。「本来であれば、売り主に恩義を感じるというより、上顧客のはずなのに・・・」と、かつて大手エネルー幹部はこぼしていた。

 だが、東日本大震災後の世論は経産省をも動かした。