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 今回解説するのは小脳です。脳の他の部位と違って、比較的分かっていることが多い部分です。霊長類はもちろん、魚類から哺乳類にいたるまで、種を超えて脊椎動物すべてに共通した構造を持っています。このことから、小脳は脊椎動物には無くてはならない重要な器官であるとされます。

図1 小脳
図1 小脳
(図:Gray, H., Gray’s Anatomy of the Human Body,1918を基に加筆)
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小脳の損傷で運動がぎこちなく

図2 小脳疾患患者の手の動き
図2 小脳疾患患者の手の動き
(図: Thomas, A., Cerebellar functions, 1912)
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 小脳(cerebellum)の主要な機能は(1)滑らかな随意運動、(2)身体の平衡を保つ、(3)歩行です。1950年代には既に「小脳は滑らかな随意運動に必須」ということが分かっていました。たとえば、目の前にあるペンを取ろうとするとき、手を滑らかに移動してペンに到達させることができるのは小脳のおかげです。

 脳卒中や脳腫瘍、外傷、アルコール中毒などが原因で小脳に障害が生じると、この滑らかさが失われ、手の動きが早すぎたり遅すぎたりする状態を交互に繰り返すようになってしまいます1)。図2は、上に書いてある線を、小脳に疾患がある人がトレースした結果を下に示したものです。滑らかさが失われ、ぎこちない動きになっていることが分かります。