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 小脳は、文字通り大脳と比べて小さな器官です。多少損傷しても滑らかな運動ができなくなるといった程度で、昔は運動の微調整程度の役割を持つと思われていましたが、後述するように実は様々な機能を受け持っている重要な器官です。重さでは脳全体の1割程度しかない小脳は、実は脳全体の8割のニューロンを有しているのです注1)。「ニューロンが脳の処理の最小単位」であると仮定すれば、脳での処理の8割は小脳が担っているといえます。

注1)詳しく見ると、このニューロンのほとんどは顆粒細胞で、顆粒細胞だけで脳全体の7割を占めています。

 さらに小脳は、脊椎動物ならどの種であっても大きさが異なるだけで同じ構造をしています。このため動物の高度な情報処理において、極めて重要かつ普遍的な何かを実行していると考えられます。前回説明した大脳基底核と同様に、汎用人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)の研究においては極めて重要な部位といえます。なお、小脳の生理学的な特徴は、連載の第6回で紹介しました。こちらも併せてご覧ください。

3層構造が整然と続く

 小脳の仕組みを簡単におさらいしてみましょう。小脳特有の構造の特徴は、図1のような3層構造がどこを見ても均一に、整然と並んでいる点にあります。

図1 小脳の3層構造
図1 小脳の3層構造
細かい部分は省略してあります。
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 これまで見てきたように、大脳新皮質には非常に複雑なネットワークがあり、低次の領野から高次の領野へと情報が伝達されて、より高度な情報処理が行われていると考えられています。一方で小脳を見ると意外とシンプルで、この3層構造がずっと続いているだけです。もう一つの興味深い点は、顆粒細胞同士、ゴルジ細胞同士、あるいはプルキンエ細胞同士の接続はなく、情報はかならず別の層へと伝わっていく点です。