経営者とデザインの関係性
奥村 昔はデザインや広告の検討をするときに、経営者も同席することが珍しくありませんでした。でも、同席者が担当役員になり、部長になり、課長になり、今では現場担当者しか出て来ないことが多くなりましたね。
僕は、1970年代後半から1980年代前半にかけてセゾングループの仕事をよくやっていて、その時代は代表だった堤清二さんにもしょっちゅうお会いし、本人にプレゼンしていました。最近は、そういう経営者にプレゼンするような機会はないですね。
馬場 世の中がデザインに興味がなくなってしまったのかな、という印象を受ける話ですよね。
僕は、あるビールメーカーの経営者と懇意にさせてもらっています。その方は以前、海外担当役員をなさっていて、ある日食事をした際に、「国によって広告の考え方は違うし、一つひとつの国向けの広告を見るのは大変ですね」と話したら、その方は「広告は分からないから見ていないよ」と言うんです。昔から知っている間柄ですから「経営者なら広告を見なきゃダメだよ」と叱ってしまいましたが(笑)。
なぜ、私がそういうことを話したかというと、企業の経営陣が見るべきものは、広告、流通、商品の三つだと考えているからなんです。資生堂の初代社長だった福原信三さんは自分で広告をつくっていました。けれど、経営トップが広告まで見ているという企業は、今はほとんどない。
トップがそのすべてを見ているところは伸びているんじゃないかなと思います。
奥村 そうですね。でも、見ていない企業の方が圧倒的に多いと思います。
(後編に続く)