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 医療と看護、介護の専門職をつなぐ情報連携のネットワークづくりが、全国で進んでいます。私達が訪問看護ステーションを置く東京都北区では、地域レベルで同様の仕組みを目指しています。280人ほどの医師、さらには訪問看護師などを加え、クラウドで情報連携するという形です。

日本訪問看護財団立あすか山訪問看護ステーション 統括所長の平原優美氏(写真:加藤康、以下同)
日本訪問看護財団立あすか山訪問看護ステーション 統括所長の平原優美氏(写真:加藤康、以下同)
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 看護師は、医療と日常生活の両方の視点を持てる唯一の専門職。患者に関するあらゆる情報を持つ専門職と言ってよいと思います。そうした強みを生かし、米国では訪問看護師を中心にした情報連携の仕組みが立ち上がりつつあり、私達はその日本版をつくりたいと考えています。クラウドやAI(人工知能)を使いながら、医療と生活にかかわるデータを総合的に見える化しようというわけです。

 残念ながら、うまくいかない点もいくつかあります。1つは、行政との間に壁があることです。地域レベルで情報連携の仕組みを作ろうとすると、どうしても行政との間に確執を生じることがあります。もう1つは、急性期から在宅までさまざまなレベルのケアに対応しなくてはならないことです。共有すべき情報は多様で、それを共有する関係者もケアの内容によって変わるという複雑さがあります。

 クラウドなど情報連携の仕組みを利用する側に、意識の差があることも否めません。現状のままで困っていないので使う気にならない、という関係者もいます。その仕組みを導入することで、何を目指すのか。その方向性を関係者が共有せずにスタートを切ってしまうと、うまく機能しない場合が出てきます。

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 “歩いていける距離”にある社会資源にアクセスしたり、その距離の間で情報を共有したりするツールがない、ということも大きな課題ではないでしょうか。全国規模のデータ連携がよく議論されている割に、もっと小さなエリアでどのように情報を交換し共有できるかにはあまり目が向けられていません。

 中学校区のような単位で、医師や民生委員などを巻き込んだコミュニケーションの手段をどう作っていくか。私が大切だと考えるのはそうした仕組みであり、地域包括ケアを目指す取り組みの中でも、まだ誰も手をつけていない領域です。そのモデルとなるような取り組みが出てくることに期待していますし、私達自身の挑戦でもあります(談)。