看護師をできる限り病棟担当へ
恵寿総合病院がユニバーサル外来の導入を検討したのは、本館新築がきっかけだった。同病院が立地する地区は都市計画法の準工業地域に指定されており、容積率・建ぺい率が抑えられている。このため、外来スペースを確保する工夫が必要だった。
董仙会理事長の神野正博氏は発想の原点をこう説明する。「本館はこの先40年、50年にわたって急性期医療を担える施設にしたいという思いがあった。容積率などの制限がある中で病室はある程度面積を確保する必要があるし、手術室や放射線検査室も将来の機器導入に備えたスペースを設けたい。必然的に外来診察室にしわ寄せが来る。しかも診療科は医療需要によって変遷するし、診察室数も増減する可能性がある」。
ユニバーサル外来には、看護師をできる限り病棟担当に再配置するという重要な目的もあった。「病院が病院たる機能は急性期医療」(神野理事長)という考えを維持するために、病棟の7対1看護体制は必須条件とした。看護師不足という求人環境もあるが、外来担当の看護師を必要最低限に抑え、病棟看護を手厚くすることは、400床クラスの地方の中規模病院における経営効率からも非常に重要な施策と考えたからだ。
従来、各診察室には最低1人の看護師を配置していたが、診察室を1区画に集約することで、混雑時でも診察室20室に対して看護師4人程度で担当できるようにした。単純計算でも15人以上を病棟に移すことができた。実際は、外来化学療法や病児保育などの担当看護師が、患者・病児がいないときに遊軍的に診察室担当につくこともあるが、非常に効率的な人員配置が可能になったという。
診察室付の看護師を削減できたことにより、総合受付にトリアージ専門の看護師を配置できるようになった。初診の患者がどの診療を受診すべきか相談に乗ることができる他、診察前にレントゲン撮影や血液検査などのオーダー代行をできる仕組みとした。患者はより適切な診療科を受診できるようになり、同時に診察室と検査室を往復する時間のロスを減らすことができるようになった。