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見逃せないICT戦略

 ユニバーサル外来を実現できた背景には、このように働き方・意識改革を職員自ら自立的に取り組む姿勢が醸成されていたことが大きい。もう一つ見逃せない背景が、積極的な院内のICT化戦略である。具体的には、どの診察室で利用しても、いつもと同じ状態で電子カルテを利用できるように仮想化技術を導入した。

 恵寿総合病院は、医療、介護、福祉、保健の複合体グループ「けいじゅヘルスケアシステム」の構築・進展を進める中で、長年にわたり積極的なICT投資を続けてきた。2017年9月には、患者が自身の診療情報の一部を保管・閲覧できるWebサービス「カルテコ」の提供も開始した(関連記事)

 ユニバーサル外来導入にあたり当初は、外来電子カルテ端末をノートパソコンとして、各医師が自分のパソコンを持って診察室に出向くことを考えたが、「さすがに受け入れてもらえないだろうと思った」(神野常務理事)。そこで新棟建設と病院情報システムの更新が重なったこともあり、VDI(仮想デスクトップ基盤)を導入し、病院情報システムの完全仮想化に踏み切った。

ユニバーサル外来の実現に不可欠だった電子カル端末の仮想化(VDI)。どの診察室でも自分専用の電子カルテ画面を立ち上げて利用できる
ユニバーサル外来の実現に不可欠だった電子カル端末の仮想化(VDI)。どの診察室でも自分専用の電子カルテ画面を立ち上げて利用できる
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 これにより、その日に割り当てられた診察室のデスクトップパソコンにID/パスワードを入力すれば、自分専用の電子カルテ画面が立ち上がり、担当患者のカルテや自分のスケジュール、メールなどを利用できる。従来、電子カルテとインターネット用端末・画面をそれぞれ設置していたものが1台の端末で両環境を利用できる他、シングルサインオンでさまざまな院内サービスの利用を可能にした。

 「モノのデザインに対する受賞ではなく、仕事のやり方をデザインし、変革したことにより受賞できたことが誇れるし、大変嬉しい」。神野理事長は胸を張る。「ユニバーサル外来導入の意思決定自体はトップダウンではあるが、(組織に関与するメンバーが主体的にかかわる)ガバナンスが働いたこと、そして、それを支えたICT化戦略があったからこそ」。同氏は、グッドデザイン賞を受賞できたワケをこう結んだ。

■変更履歴
記事初出時、「14科共用」とあったのは「17科共用」でした。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。