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事業統合の2つの狙いとは…

 三菱との事業統合は、大きく2つの意味を持つと伊丹氏は説明する。第1は、粒子線治療装置事業に関する三菱の長年の経験、それに伴う製品や技術のポートフォリオ、施設運用支援のノウハウ、顧客基盤などを取り込むこと。第2は、次世代に向けた技術開発を加速させることだ。

 第1の点については、日立と三菱は同じ粒子線治療装置を手掛けながら、ポートフォリオや顧客基盤の点では補完的な関係にある。「国内の雄で事業規模に強みを持つ三菱と、海外に強い日立。この組み合わせは悪くない」。伊丹氏がこう語る意味をひもといていこう。

 粒子線治療には、がんに炭素線を照射する重粒子線治療と、陽子(水素原子核)線を照射する陽子線治療の2タイプがある。このうち、三菱が大きな強みを発揮してきたのは重粒子線治療だ。

2017年10月に竣工した大阪重粒子線センター。日立の重粒子線治療装置が納入された(画像提供:大阪国際がん治療財団)
2017年10月に竣工した大阪重粒子線センター。日立の重粒子線治療装置が納入された(画像提供:大阪国際がん治療財団)
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 国内で稼働中の重粒子線治療施設は5施設。三菱はこのうち4施設に装置を納入してきた。重粒子線治療施設の稼働を20年以上サポートしてきた実績に加え、重粒子線と陽子線の両方に対応できる治療装置などの独自技術を持つ。ただし、重粒子線と陽子線ともに装置納入先は国内に偏り、ここ数年は日立や東芝などに押される形で新規受注に苦戦してきた。

 対する日立は、人口が減少に転じた国内市場の伸びは限定的と見て、伸びしろの大きい海外市場を早くから重視してきた。米Mayo Clinicなど、臨床の世界で大きな影響力を持つ海外医療機関への納入実績も豊富だ。

 日立は2タイプのうちでは、小型化と低価格化がいち早く進み、世界の主流となった陽子線に軸足を置いている。同社が粒子線治療装置を納入し稼働中の施設は7つあり、それらすべてが陽子線だ。重粒子線については、初号機を大阪重粒子線センター(大阪市)に納入したばかり。2018年4月に海外から初受注するなど、本格展開はこれからだ(関連記事3)。

 “国内・重粒子線”の三菱と“海外・陽子線”の日立。2社が手を組むことで、世界に例のない粒子線治療のコングロマリットが誕生する。業界ツートップのIBA社とVarian社は、粒子線治療装置については陽子線のみを手掛けている。日立は2016年に三菱重工業から手に入れた高精度X線治療装置、さらに子会社ではBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)装置の開発も手掛けており、放射線治療装置のポートフォリオの幅広さでは群を抜く(関連記事4同5)。