PR

超小型の陽子線治療装置でしのぎ削る

 粒子線治療は、市場が伸びようとしているだけに開発すべきテーマも多い。三菱との事業統合のもう一つの狙いは、そのためのリソースを確保し技術開発を加速させることだ。

 日立がこの先の勝負の土俵と見定めているのが、シングルルーム(single room)タイプと呼ばれる超小型の陽子線治療装置。世界首位を狙うためには、その開発力強化が欠かせない。

 シングルルームタイプでは、ガントリーを複数設けず一つに絞り、加速器を含む装置の設置面積を400m2を切る水準に抑える。加速器から出た陽子線を電磁石で曲げてからガントリーへ導くのではなく、ガントリー上の電磁石でビームを調整する機構により、こうした小型化を実現する。目指すのは、X線治療室2つ分といったサイズの陽子線治療装置だ。

米MD Anderson Cancer Centerに納入した陽子線治療装置。スポットスキャニング照射による治療を2008年に開始した(出所:日立製作所)
米MD Anderson Cancer Centerに納入した陽子線治療装置。スポットスキャニング照射による治療を2008年に開始した(出所:日立製作所)
[画像のクリックで拡大表示]

 シングルルームタイプの普及により、陽子線治療装置は受注生産品でありながら「量産品に近い市場になる」と伊丹氏は話す。価格も20億円前後と、メーカーにとっては利益を出すのが難しい水準の勝負になる。シングルルームタイプの納入実績ではIBA社とVarian社が先行。日立も近く初受注する見通しで、2社の背中を追う。

 高精度の照射技術では、日立に大きな強みがある。呼吸に伴う腫瘍の動きに合わせて照射する動体追跡技術と、腫瘍の形状に合わせるスポットスキャニング照射技術を組み合わせた治療を、北海道大学と共同でいち早く臨床に応用(関連記事6)。2018年1月にはこの治療技術が、米国でも提供可能となった(同7)。今後は金マーカーレスの動体追跡技術やX線被曝を伴わない動体追跡技術などの可能性も模索する。