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ハードからソフトへ競争軸が移る

 重粒子線治療装置についてもこの先、大きなイノベーションが求められる。「陽子線のシングルルームタイプのような小型化と低コスト化が、重粒子線治療装置にもぜひとも必要だ。(100億円前後という)現在の価格では導入できる施設は限られ、普及は見込みにくい」と伊丹氏は話す。

 重粒子線治療施設は、中国などアジア地域を中心に増える見通しではあるものの、陽子線に比べるとそのペースは鈍い。普及を加速させるためには装置の小型化や低コスト化、治療の生物学的効果がより高い照射技術などが求められる。炭素イオンだけでなくHeイオンなども照射できるようにして治療効果を高めるマルチイオン照射技術については、既に医療機関からの引き合いがあるという。

「2018 国際医用画像総合展(ITEM 2018)」でも放射線治療ソリューションを紹介した
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 メーカーにとって負担になるのは、こうしたハードウエアの開発だけではない。ハードウエアの性能やコストは、実はトップメーカーの間では大きな差が付きにくくなってきている。「シングルルームタイプが広く普及すれば、粒子線治療装置は一般の放射線科医が使うツールになる。粒子線治療の専門医でなくても使えるようにする工夫や、治療計画を迅速に立てられるよう支援する機能など、ソフトウエアでの差異化が鍵を握る」と伊丹氏は説明する。

 競争軸がハードウエアからソフトウエアへ移ることは、日立にとってはむしろ望むところ。粒子線治療が重厚長大なハードウエアの世界から、日立が全社を挙げて注力する「デジタルやIoT(Internet of Things)、AI(人工知能)の世界に入ってくる」(伊丹氏)ことを意味するからだ。同社はAIによる治療支援やIoTによる遠隔支援などが、粒子線治療でも重要なテーマになるとにらんでいる。

 ゲノム医療や免疫療法など、最先端のがん医療の知見を取り込み、粒子線治療とのシナジーを追求する取り組みも重要性を増す。「我々に不足しているのは、医療現場に対する理解の深さ。良いものを作れば売れるというメーカー目線から脱したい」(伊丹氏)との考えから、医療機関との連携を強化していく。