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単独での生き残りは難しく

 三菱との事業統合は、技術開発を加速させるうえでもう一つ大きな意味を持つ。開発投資を続けるのに必要な事業の財務基盤を強化することだ。

 シングルルームタイプでの激しい競争が物語るように、メーカーにとって粒子線治療は生やさしい事業ではない。粒子線治療装置の事業だけで見ると赤字のメーカーが多く、日立も大きな利益は出ていないようだ。「メーカー側のコストが価格競争に追いつけていない」(伊丹氏)という現状がある。

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 苦しい事情は、医療機関側も同じ。粒子線治療施設の建設プロジェクトを立ち上げたものの、財務の見通しが立たなくなり中断したり、治療を始めたものの思うように患者が集まらず施設運営に苦しむ例は少なくない。

 こうした状況を考えると、メーカーが最先端の治療装置で大きな利益を上げることは難しい。むしろ安定した利益を生みやすいのは、納入済み装置のメインテナンスや更新の事業だ。この点から、多くの治療施設の運営を長年サポートしてきた三菱の事業基盤は、日立には大きな魅力と映った。三菱にとっては、こうしたサポートを続けつつ、同時に開発投資を続けることは荷が重すぎた。両社の経営トップが単独での生き残りは難しいとの考えで一致し、事業統合を決めた形だ。

 日立と三菱は今後、粒子線治療施設のサポートや次世代の装置開発に「ワンチームで取り組む」(伊丹氏)という。両社はこれまで、粒子線治療以外でもさまざまな分野で協業を進めてきた。「組織のつくり方や業務の進め方、マインドセットがとても良く似ている。互いに話をしていると、社内での議論かと錯覚するほどだ」と、伊丹氏はワンチームとしての運営への自信を語っている。

■変更履歴
記事初出時、2ページ目で「2017年4月」とあったのは「2018年4月」でした。お詫びして訂正します。また、3ページ目の写真とキャプションを差し替えました。記事は修正済みです。