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2.医用画像からの数値人体モデルの作成

 人体形状並びに内部の組織構成を詳細に模擬した数値人体モデルの開発状況を述べる。人体モデルの開発では、MR画像などの医用画像に基づき、人体を構成する組織の同定が行われている。数ミリメートルオーダの解像度のボクセルから構成されるようになったのは、1997年英国のグループによるNORMANが初めである(1)。その後、国内においても平均体型の日本人男女の数値人体モデルTARO及びHANAKOが開発された(2)。このモデルは2mmのボクセルから構成されており、51種類の組織が同定されているが、モデルの作成に際し、MR画像から組織の同定を行った上、最終的には手作業で補正が加えられている。更に近年では、スイスのグループにより、MR画像から、幅広い年齢にわたる全身モデル群Virtual Familyがリリースされた(9)。上記の全身モデル群は、例えば脊髄神経への磁気刺激など、個体差が比較的小さい部位については汎用できる可能性がある。

 一方、脳など個人差の大きい部位への刺激については、外部からの電気・磁気刺激によりばらつきが顕著であることが報告されており(4)、個々人のモデルでの検証が必要とされている。以下では、個々のMR画像から頭部モデルを構築する方法を紹介する(5),(6)

 脳組織に関するメッシュ生成は、MRにおけるT1強調画像よりフリーソフトFreeSurferにより生成することが可能である(10)。また、T1及びT2強調画像双方を用い、ソフトウェアライブラリ(11)を用いることにより、皮膚、頭蓋、脳骨髄液などのメッシュ生成が可能である。この両者のメッシュを組み合わせることにより個々のMR画像に基づく頭部モデルとなる。筆者の研究グループでは、後者は独自に開発したアルゴリズムを用いているが(5)、手続きはほぼ同一である。人体頭部モデル生成過程を図1に示す。また、アメリカでは、Human Connectomeと名付けられたプロジェクトが進行中であり、その過程で個々のMR画像より、50体の頭部モデルを作成、リポジトリとして利用が可能である(6)

図1 MRI におけるT1 強調画像、T2 強調画像から、人体頭部モデルを構築する手順
図1 MRI におけるT1 強調画像、T2 強調画像から、人体頭部モデルを構築する手順
脳組織のセグメンテーションとそれ以外の組織を別のソフトウェアにより実施し、両者の位置合わせを行った上で合成することにより、計算機上で人体頭部モデルを構築可能。各組織に異なる電気定数を与えることにより、電気的に人体を再現できる。
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