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2. フレキシブルワイヤレスシステムの実現に向けた圧縮センシング技術

 本章では、電波データの圧縮伝送のために筆者らは以下の電波データのスパース性を利用した圧縮センシング技術に取り組んできた(2)。このうち①、②を紹介する。

① 異なる優先度を持つマルチバンド信号に対し、優先度に応じた圧縮率を適用する選択的圧縮サンプリング技術(4)

② 圧縮センシングによる信号検出技術(5)

③ 1bit圧縮センシングによる伝送量軽減技術(6),(7)

④ 構造化・スパース観測行列を用いた高速圧縮・復元技術(6)~(8)

⑤ 空間的な相関を用いた分散圧縮センシング技術(9)

2.1 選択的圧縮サンプリング技術

 本技術は、異なる優先度を持つマルチバンド信号の同時収容に向け、優先度の高い帯域の信号(復調対象の信号:以降、復調信号と称す)は、圧縮率を1とし圧縮しない従来のナイキストサンプリングを行い、優先度の低い帯域の信号(センシング対象の信号:以降、センシング信号と称す)は、圧縮センシングによる圧縮処理を行う技術である(4)

 まず、図2(a)に示すように、マルチバンド一括受信ミクサを備えた広帯域・高ダイナミックレンジRF回路(2)を用い、復調信号がセンシング信号より低いベースバンドに配置されるようにダウンコンバートを行う。次に、全ての復調信号の帯域の4倍と全てのセンシング信号の帯域の2倍の和に相当するサンプリングレートでA-D変換処理を行い、偶数番目のサンプル(図2(b)の白いサンプル)をランダムに間引くことで伝送量を軽減する。ネットワーク側は、奇数番目のサンプル(図2(b)の黒いサンプル)のみを用いて、復調信号に対する復調処理を行う。この場合、図2(c)に示すように、センシング信号にはエイリアシングが生じるが、復調信号にはエイリアシングが生じないため、従来のナイキストサンプリングによる復調信号と同等の復調信号が受信可能となる。続いて、サンプリングデータから復調信号に相当する成分を引いて、圧縮センシングの復元処理を行う。このときは、取得した全てのサンプリングデータから復調信号を除去してから復元処理を行うため、図2(d)が示すように、センシング信号に対してもエイリアシングが生じることなく、復元することが可能となる。

(a) ダウンコンバート
(a) ダウンコンバート
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(b) 選択的圧縮サンプリング
(b) 選択的圧縮サンプリング
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(c) 復調信号の復元
(c) 復調信号の復元
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(d) センシング信号の復元
(d) センシング信号の復元
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図2 選択的圧縮サンプリングの例