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2.3 量子ビット操作

 量子ビットに重ね合わせの状態を許すと、量子並列性が生じる。n-qubit が初期状態|0>⋯|0>にあるとして、全てのqubit にHを作用させると、|ψ>=((|0>+|1>)/ )⋯((|0>+|1>)/ )=(|0⋯0>+|0⋯1>+⋯+|1⋯1>)/2n/2となり、n-bit の全ての数の重ね合わせの状態ができる。ユニタリ変換Uxからf(x)を計算するタスクをU|x>|0>=|x>|f(x)>とすると、U|ψ>|0>=(|0>|f (0)>+|1>|f(1)>+⋯+|2n−1>|f(2n−1)>)/2n/2 によって2n個のxについて並列的にf(x) の計算が行われ、手間は一つのxと変わらない。

 しかし、|x>|f(x)> の確率振幅は1/2n/2であり、確率1/2nでしか結果を読み出せないので、それだけでは計算は速くならない。ここでf(x)が周期関数の場合には、|x> の方にFFT の量子版である量子フーリエ変換(QFT)(4)を適用すると、干渉効果で周期が抽出できる。これがショアのアルゴリズム(7)の原理である。このように、干渉効果によって、正解の確率振幅は足し合わされ、不正解の確率振幅は打ち消し合うようにするのが、量子アルゴリズムであり(4)、そのためには重ね合わせの位相が保たれていなければならない。

2.4 量子誤り訂正

 量子ビットの重ね合わせの位相は、環境との相互作用によって容易に破壊されてしまう。このデコヒーレンスが、量子コンピュータを実現する上で最大の障害となることは、当初から予想されており、ショアのアルゴリズム提案後すぐに量子誤り訂正符号のアイデアが出された(9)。古典的な誤り訂正と本質的に異なるところは、量子状態は複製できないこと、観測すると|0>か|1>に収縮してしまい重ね合わせの情報が失われること、量子誤りはビットフリップXと位相フリップZ及びそれらが同時に起こることを解決しなければならないことである。

 古典的な線形符号を組み合わせてX 基底とZ 基底で誤り訂正を行うが、符号化された量子情報は観測せずに、誤りのシンドロームのみを観測することによって量子誤りが訂正可能であることが示された。例えば、1-qubit を7-qubit に符号化することによって1-qubit の量子誤りから守ることができる。更に、1997年には、量子誤り訂正過程を含む全ての量子演算に誤差を許しても、誤差があるしきい値以下であれば、信頼性の高い量子計算が行われる誤り耐性量子計算の概念によって、大規模量子計算の可能性が示された(10)。ここまでの教科書として文献(11)を挙げておく。当初のしきい値は0.001% 程度と悲観的な値であったが、2007年にラッセンドルフが、Kitaev のトポロジカル量子計算(12)から、二次元的に配列したqubit で最隣接間の量子演算だけを用いた表面符号に基づき0.75% のしきい値を持つ方式を考案し(13)、実現の可能性が現実味を帯びてきた。