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3.おわりに

 大規模な量子コンピュータの実現は非常に挑戦的な目標であるが、科学と工学のフロンティアであることは間違いなく、アポロ計画のようにその過程で多くの科学的、技術的な副産物を生み出すことが期待される。欧米は官民ともにばく大な研究投資を始めており(14)、量子情報に特化した研究センターや研究プログラムで人材育成も行われている。

 超伝導量子ビットに限らず量子ビット系の課題は、集積化であろう(20)。量子ビットをたくさん並べて、それらの間を量子的な媒体でつないで演算する方式で集積度を上げるには、マイクロ波技術や材料、半導体で培われた集積技術などを駆使する必要がある。そういう意味で、量子コンピュータの開発には、本会の様々な分野の専門家が貢献できる可能性がある。2016 年秋にはERATO中村巨視的量子機械プロジェクトが始まり、超伝導量子コンピュータの研究に我が国でも大きな期待がかかっている。本格的な量子コンピュータ実現への道はまだまだ入口の段階であり、将来的にどの物理系が大規模化を実現するかはまだ分からない(14)。欧米中並の研究投資を人材育成まで含めて長期的視野で行えば、我が国にも十分チャンスはあるはずである。

 量子コンピュータは素因数分解しかできないという誤解があるが、素因数分解は古典コンピュータよりも量子コンピュータが強力であることの強い傍証の一つにすぎない。それ以外にも、量子シミュレーションや量子化学計算(29)には大きな期待があるし、機械学習に使える可能性もある(30)。まだ存在もしない量子コンピュータのアルゴリズムを考えたのはほんの一握りの研究者であったが、既に目の前に16-qubit の量子コンピュータがあって誰でもインターネットからアクセスでき、近々50-qubit の量子コンピュータが実現するとすれば、話は違ってくる。これからは誰でも量子アルゴリズムの研究ができる。新しい画期的な量子アルゴリズムが生み出されることを期待したい。