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日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第19回:ハイブリッド車用の変速機 モーターで補助動力と回生、構造は各社で大きな違い」の転載記事となります。

 欧州メーカーが開発したHEV変速機で特徴的なのが、既存のトルクコンバーターと変速機の基本レイアウトをほぼそのまま活用している点である(図2)。ミッションケースは専用設計するが、内部構造を流用しながらハイブリッド化することが可能だ。

図2 BMW社のPHEV「330e」のHEV変速機
図2 BMW社のPHEV「330e」のHEV変速機
トルクコンバーター部分にモーターとクラッチを内蔵したHEV変速機。8速ATであり、後端の遊星歯車機構以外にも内部に2組の遊星歯車が組み込まれている。構造的にはトルクコンバーターを置き換えたものだが、実際にはトルクコンバーターを用いたATとはミッションケースが異なる。
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 トルクコンバーターを1個のモーターで置き換える変速機をエンジンと組み合わせる場合、車載電池やPCU(パワー・コントロール・ユニット)はドライバーの加速要求や巡航状態を判断し、充電量からモーター駆動の可否を決定する。それによってエンジン側のスロットル開度や変速機の段数などを協調制御する。

 従来の制御系を生かしながらハイブリッド走行の機能を上乗せする形で組み込めるため、制御系のシステムも比較的シンプルに追加できるのが強みであろう。

 欧州勢の視線の先にはプラグインハイブリッド車(PHEV)の存在がある。PHEVの普及を見越して、システムコストを抑えつつ拡張性のあるHEV変速機として開発を進めている状況でもある。メガサプライヤーからの部品供給も進んでおり、今後ますます採用車種が増えることが予想される方式である。