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DCTはATではないのか?

 DCTとATを分ける決定的な違い、それは変速のメカニズムにある。DCTの内部機構はMTをベースにしているため、DCTとATの違いは、MTとATの違いを見ると分かりやすい。

 MTはすべての歯車同士が常に噛み合っていて、駆動輪に動力を伝える側の軸と歯車の噛み合いを切り替えることで変速する。つまり入力軸と歯車はスプラインにより完全に噛み合う。この機械的な結合こそが、MTの特徴である。

 ATは遊星歯車の回り方を油圧で駆動する多板クラッチで切り替える。MTはシンプルに歯車の噛み合いを利用した機械的な変速機であるのに対し、ATは構造上、駆動力の伝達にも油圧が不可欠なのである。シンプルで効率の良いMTを進化させて、自動変速を実現させたのがDCTだ。

 そもそもDCTは耐久レース用の変速機として誕生した。これは加速のタイムロスを減らすことで速さと燃費を向上することを狙ったものだった。そこで伝達効率の高いMTを2ペダル化し、制御を高度化することで乗用車に使える変速機として開発されたのが、今日のDCTということになる。

機械的損失から見た変速機の効率

 MTは機械的に噛み合っている変速機であるから、伝達効率は理論上100%であるはずだ。しかし実際には歯車の噛み合い抵抗や摩擦損失、クラッチの損失などもあり、伝達効率は95~98%程度といわれている。しかも変速時には駆動力が完全に遮断されて加速は断続的になるため、実際の走行ではさらに効率は落ちることになる。

 もっともこの場合、効率の低下よりも断続加速によるギクシャク感が乗員を不快にさせることの方が問題だ。運転者にとって運転するハードルがまず高いこと、これが日本においてMTの普及率が低下していった理由である。

 ATはトルクコンバーターの損失が大きいが、発進時以外はロックアップすることで損失を大幅に抑えることができる。残りはMTよりも大きい遊星歯車の噛み合い損失や各ギアの湿式クラッチの引きずり抵抗、油圧ポンプの駆動損失などだ。

 多段化により損失は増加することになるが、エンジン回転を低く抑える効果や、損失を抑える改良などでかなり効率を高めており、現在のところ高効率なATの場合、効率は90%前後と言われている。