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日本精機宝石工業代表取締役社長の仲川和志氏
日本精機宝石工業代表取締役社長の仲川和志氏(写真:松田 弘)
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 SAS針のアイデアは、先代の社長である私の父が考案した。祖父は猛反対したのだが、父は「絶対にこれがいいから」と押し切った。発売当初は全く売れず、祖父は「だから言っただろう」と怒ったが、その祖父が亡くなってから何年かたったころに少しずつ認められてきたという。

 丸針などに比べれば、S楕円針やSAS針は確かに高い。だが、決して“暴利”を貪っているわけではない。特にSAS針は高価な素材を使うので、どうしても価格が上がってしまう。それでは、価格をどう決めているかというと、基本的にはコストに適正な利益を乗せた、いわゆる「積み上げ式」である。

 もちろん、世の中には市場の需要から価格を決めるという考え方もあるだろう。それも一理あるのかもしれない。だが、いくら高く評価されているからといっても、ブランドとして絶対的に確立されていないうちは、積み上げ式でやっていかなければならないのかなと思っている。

 それができるのは、完全受注生産だからということも大きい。日本精機宝石工業では、見込み生産を一切していない。そもそも多品種少量生産なので、そうせざるを得ないともいえるのだが、もし見込み生産で在庫を持っていたら、その分を価格に上乗せすることになっていただろう。

 在庫を持たないので、現場は大変だ。日本精機宝石工業では管理会計を導入しており、月初に必要な材料を仕入れて、月末にすべて使い切ることを理想としている。これだと、余計な在庫を持たずに済むのだが、生産能力以上の注文を受けると、どうしてもお客さんを待たせてしまうことになる。

 それでも、安易に量を求めるのではなく、1本1本をまじめにつくっていくことが大事だと考えている。こちらからすれば17万5000分の1でも、お客さんにとってはそれがすべてであり、その積み重ねが信頼につながるのだ。