PR

開発や製造では、あえて面倒な道を選ぶ

 日本精機宝石工業では、レコード針のほかに、微細な寸法を高精密に計測する「コンタクトゲージ」、難加工材を研削する「ダイヤモンドバー」、砥石表面を整形・目立てして再生する「ドレッサー」などを製造している。これらはいずれも、レコード針の針先で培ったダイヤモンド加工の技術を応用することで、新たに参入したものだ。

 事業形態はさまざまだが、共通点があるとすれば、それは「あえて面倒なことをやる」となるだろうか。例えば、ゲージコンタクトに“標準品”はなく、ほぼカスタムメードである。しかも、注文数は1個、2個ということが少なくない。計測する対象が変わったら、それに合った製品を一から設計する。

 多品種少量のものづくりは確かに面倒なのだが、それによって対価を得ているとも認識している。だから、もし製品の開発や製造で“簡単な道”と“面倒な道”があったら、私は迷わず後者を選ぶ。簡単な道を選んだら、その瞬間はいいかもしれないが、後で誰かに追い付かれてしまう危険性がある。面倒な道は誰も選ばないので、長い目で見れば安全な道でもあるのだ。

 レコード針でも、考え方は同じだ。実は、最もグレードの高いSAS針は、ある部品の材料を調達できなくなったため、2016年2月にいったん販売を終了した。しかし、別の材料で何とか製造できないかと試行錯誤を続けた結果、販売を再開するメドが付いたのだ。しかも、従来のSAS針は材料が1種類だけだったが、新開発のSAS針は材料が3種類に増えており、性能も高まっている。同年夏に発売する予定だ。あきらめることなく、地道に開発したかいがあった。

 自社のブランドも少しずつ高めていきたい。これまではひたすら質実剛健であればいいと思っていたが、特にレコードというのは人が生活を豊かにしようとして買うものだから、遊び心も必要だ。これまで日本精機宝石工業が製造していたレコード針は、SAS針のように独自の要素もあるとはいえ、基本的には“代替品”という位置付けだった。今、自社ブランドでオリジナルのカートリッジを世に送り出す計画を進めている。これも、2016年夏には披露したいと思っている。

仲川 和志
日本精機宝石工業 代表取締役社長
仲川 和志 なかがわ・かずし●1963年大阪市生まれ。1987年関西学院大学文学部卒業。その後、ダイエーフォトエンタープライズ、ユナイテッド・オブ・オマハ生命保険会社を経て、1992年4月に日本精機宝石工業に入社。同年10月取締役総務部長、1997年7月取締役専務、2002年10月から現職。(写真:松田 弘)