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「良いものを、より安く」。戦後の日本経済を支えてきたこの”美徳”は今や時代遅れ。田中公認会計士事務所所長の田中靖浩氏は、モノ余り時代の今の日本で値下げ競争に尽力することの危険性を指摘する。安さで勝負するのではなく、顧客の感性や心理に訴えることで、高価格でも顧客を満足させることができる。そのヒントは、何と軍事戦略に隠されているという。

デフレ輸出大国ニッポン

 今、日本の最大の輸出品は”デフレ”である。最近、そう考えるようになった。この思いを強くしたのは、半年ほど前に講演で東南アジアを訪れたときのことだ。

 現地でこんな話を見聞きした。飲食店など同じ業種で複数の日本企業が現地に進出すると、日本人同士で値下げ競争を始めるというのだ。経済成長する東南アジアは、インフレ基調にある。その中で値下げ競争をする風潮は、どうやら日本企業に特有のことらしい。

 欧米企業はもちろん、現地企業も、むしろ商品を高く売ることへの意識が高い。例えば、現地の飲食店は、「スターバックス」が進出してくると大喜びするという。なぜなら、「コーヒー1杯がこんなに高くても売れるのか」と思うからだ。普通に考えれば、日本企業は「ジャパンブランド」の付加価値を新興国で生かせるはずである。それなのに、なぜ”安さ”で勝負するのだろうか。

田中公認会計士事務所 所長の田中靖浩氏(写真:加藤 康)
田中公認会計士事務所 所長の田中靖浩氏(写真:加藤 康)
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 そのルーツは、戦後の日本の高度経済成長期にものづくりを支えた「良いものを、より安く」という”美徳”にある。大量生産で商品の製造コストを下げ、それを価格に転化する。モノがない時代は、このスケールメリットが成立した。競合と同等の品質であれば、「安い」ことが武器となり、それだけで飛ぶように製品が売れたからだ。経済は伸びているので、値下げをしても販売増で利益が増えると確信できる状況だった。

 このときの成功体験から、値下げによる売り上げ増で利益を確保する売り上げ至上主義が今日まで残ってしまったのだろう。だが、既にモノがあふれる現代では、安いというだけでは消費者は見向きもしない。むしろ、「いかに価格を上げるか」を前提にビジネスを組み立てる必要がある。