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 世界のトップアーティストやオーディオマニアがこぞって愛用するヘッドホンをつくり続けているメーカーが埼玉県富士見市にある。従業員がわずか17人のスタックスという企業だ。同社が手掛ける「コンデンサー型」のヘッドホンは、映画「ブレードランナー」の原作者として有名なSF作家のフィリップ・K・ディックが愛用していたことでも有名だ。売れ筋商品でも専用のアンプとのセット価格で10万円近く、上位機種はヘッドホンだけで実に30万円以上もする代物である。それにもかかわらず、多いときでは毎月50台も売れるという。“辛口”のマニアが多いオーディオの世界で、同社のヘッドホンはなぜ多くのファンの心をつかみ続けているのか。
スタックスのフラッグシップモデルのヘッドホン「SR-009」
スタックスのフラッグシップモデルのヘッドホン「SR-009」
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 私をはじめ、社員全員がヘビーなオーディオマニアなので「もっと良い音を聴きたい」という欲求は尽きない。だから、より良い音を目指して「自分たちが欲しい」と思う商品をつくり続けている。2011年に発売したフラッグシップモデルのヘッドホン「SR-009」の価格は37万円(税抜き)。しかもヘッドホンだけでは音が出ず、「ドライバーユニット」と呼ぶ専用アンプを購入する必要がある。この商品は、かなりの勇気を振り絞って値付けした。以前のフラッグシップモデルは20万円(税抜き)だったので、17万円も高額だ。発売前は「どれだけ売れるか」が未知数で、多少ならぬ不安はあった。

スタックス の目黒陽造氏(写真:陶山 勉)
スタックス の目黒陽造氏(写真:陶山 勉)
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 しかし、発売してみると反響は想像以上だった。注文が殺到して、一時期は納期が半年待ちになったほどだ。「価格が高くても、価値を認めてもらえれば、ファンはついてきてくれる」ということを改めて実感した。

 実は、売れ行き以上に驚いたことがある。それは購入者の年齢層だ。発売前の予想では、主な購入者は仕事をリタイアして老後に余裕がある高齢者がほとんどだと思っていた。しかし、実際は違った。SR-009の購入者で最も多い世代は30~40代だった。「若い世代はお金を遣わない」とよく言われるが、世間の常識はオーディオ業界では通用しないのかもしれない。