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コンバーターが焼損

 焼損の状態から火元は、機関室内にある変速機と考えられた。変速機は、1速~3速の3つの「液体変速機」(コンバーター)と、車両の進行方向を切り替えるための「正逆転切替機構」、速度を切り替えるための「高低速切替機構」、その他の歯車装置などから成る。正逆転切替機構と高低速切替機構は、入力軸と出力軸をつないだり切ったりするクラッチ機構で、同一の構造をしている(図2)。

図2●変速機の概要
3つのコンバーターと、クラッチである「正逆転切替機構」「高低速切替機構」、歯車類などから成る。本来、牽引時には両切替機構のクラッチが切れた「中立」状態でなくてはならない(a)。しかし、実際には「正転」側と「入換」側に接続された状態だった(b)。
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 このうち最も激しく焼損していた1速コンバーターは、ケースや冷却水を流すための水ジャケット、コンバーター内のポンプ羽根車、タービン羽根車などが焼損していた。

 冒頭に述べたように、2両目は1両目の電気機関車にけん引されており(無動力回送)、ディーゼルエンジンは動いていなかった。にもかかわらず出火したのは、車輪の回転が変速機に伝わり、コンバーターのタービン羽根車が空転して摩擦で過熱したからだった。コンバーターは封入した油(トルコン油)の作用によってポンプ羽根車の回転をタービン羽根車に伝達する変速装置。トルコン油は、羽根車を冷却する役目も担っているが、エンジンが停止していると大半は変速機内の油タンクに戻りコンバーター内は空となる。事故時はまさしくこうした状態だったのだ。

参考文献
1)運輸安全委員会,『東日本旅客鉄道株式会社 上越線 津久田駅~岩本駅間 列車火災事故』,2014年8月29日.