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定員は117人

 2015年1月に公表された事故調査報告書を基に、事故原因の詳細をみてみよう2)。事故機は日本オーチス・エレベータ(本社東京、以下オーチス)製で、1996年4月に稼働を開始している。4階の床下に駆動モーターやブレーキ、減速機などの「駆動装置」を備える「上部駆動方式」を採用しており、駆動チェーンを介して出力22kWの駆動モーターで上部スプロケット(駆動輪)を回すと、1階床下の下部スプロケットとの間に張られた踏段チェーンが循環。踏段チェーンに連結された踏段(ステップ)が昇降する仕組となっている(図2)。停止時には駆動モーターのブレーキで位置を保持する。

図2 上部駆動方式のエスカレーターの構造
一般的な構造で事故機のものではないが、ほぼ同様の構造をしている。日本エレベーター協会の資料を基に本誌が作成。
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 ステップ数は84段で、1段当たりの奥行きは400mm、幅は約1012mm*1。積載荷重は7万4529Nで、平均体重が65kgとすると定員は117人となる。従って、1ステップ当たりに乗れる人数は約1.5人いうことになる。

*1 傾斜部78段、水平部が上下各3段。傾斜部にステップ当たり1.5人(平均体重65kg)乗ったと仮定して積載荷重を設定している。

 安全装置としては、駆動チェーンの切断や踏段チェーンの緩み・切断を検知した際、およびハンドレールの速度異常(定格の50%以下が1.4秒以上継続、もしくは14%低下が5秒以上継続)を検出すると、駆動モーターを停止してブレーキが作動するようになっている。

 駆動部のレイアウトは、図3のように「可動ベッド」「固定ベッド」「トラス」の3層から成る鋼製の架台上に駆動装置を設置する構成となっている。具体的には、トラスの上に固定ベッドがM20のスタッドボルトで固定されており、固定ベッドの上に可動ベッドが、可動ベッドの上に駆動装置がボルトで固定されている。可動ベッドは、駆動チェーンの伸びに対応するためにエスカレーターの駆動方向の位置を調整できるようになっており、M24の「押しボルト」2本で位置を決めた上で階段方向へ引っ張られるのを押さえ込み、M16のボルト4本で固定ベッドに据え付ける構造となっている。加えて、固定ベッドのコーナー部の対角線上の2カ所に、「ガイドプレート」と呼ぶ可動ベッドの回転を防ぐための板が溶接で取り付けられている。

図3 ステップ側からみた事故機の駆動部のレイアウト
トラスと呼ぶ構造物の上に、固定ベッド、可動ベッド、駆動装置(駆動モーター)が載っている。