――日本でもJリーグやNPB(プロ野球)がeスポーツと連携するようになっていますが、既存のスポーツ組織としては、eスポーツと結びつくことでどのようなメリットがあるのでしょうか。

バロ 一つは若いファン層の獲得です。日本に限らず、世界的にスポーツ界は若いファンが減っていると言われているので、ゲームが好きな若い層にリーチするのに有効です。

園田 もう一つのメリットとして、リアルスポーツの選手がトレーニングの中にeスポーツを取り入れているという事例を聞いたことがあります。eスポーツは瞬発力を鍛えるのに有効なので、今後、そうした取り組みも増えていくかもしれません。

次世代eスポーツで独自文化を

――日本のゲーム産業はコンソールゲーム機でプレーするゲームが中心という特徴があります。この点はeスポーツ発展の壁にはならないのでしょうか。

バロ おっしゃる通り、その点も課題の一つです。日本にはゲーム関連企業が多くありますが、現在のところ、eスポーツに対してさほど力を注いでいるようには思えません。それは、海外で広まっているeスポーツはパソコンでプレーするものが中心なので、それが日本で普及すると自社のコンソールゲーム機が売れなくなってしまうという懸念があるからです。だから、日本の場合は、“日本らしいeスポーツ”を普及させていく必要があるのではないかと考えています。

――日本らしいeスポーツとはどのようなものでしょうか。

バロ 一つは、日本のコンソールゲーム機向けに提供しているソフトをいろいろなプラットフォームで動作するようにし、それでeスポーツを行っていくというアイデアです。もう一つは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのテクノロジーを用いて実際に汗をかくeスポーツです。

 例えばmeleapの「HADO」などのような次世代eスポーツと呼べるコンテンツを開発・提供していき、日本独自のeスポーツ文化を創っていくのは面白いと思います。他のeスポーツ先進国にはそうした動きがありませんから。

――逆に言うと、既存のeスポーツを日本に広めていくのは難しいということでしょうか。

バロ 簡単ではありません。しかし、方法はあると思っています。それは外資のeスポーツコンテンツを受け入れることです。ゲームは1つのコンテンツの寿命がさほど長くなく、せいぜい5年ほどでソフトの周期は入れ替わります。ですから、ひとまず海外で流行しているeスポーツコンテンツを受け入れて国内に広めていき、その間に、海外のeスポーツコンテンツの面白さや売りのポイントを分析し、次の周期に向けた準備をしていく。次の周期では、日本発のコンテンツで国内を始め、グローバル市場を狙っていくのです。あるいは、日本のゲーム関連企業が連携し、オープンソースのような形で皆で1つのeスポーツ専用コンテンツを作るというのもいいかもしれません。

 当然、最初の段階ではビジネス的なダメージを伴うかもしれませんが、それくらい破壊的なビジネスが必要だと思いますし、長期的にはより大きな市場を狙うことができるでしょう。

――今後、日本でeスポーツが発展していくと、どのような業界、企業にビジネスチャンスが増えていくのでしょうか。

バロ テクノロジー系の企業はもちろんですが、日本の場合、ヘルスケア業界にもチャンスが出てくるでしょう。というのも、eスポーツは老人介護施設などでコミュニティを作るのに効果的です。実際、ある団体がそうした取り組みをしており、施設でレーシングゲームや「太鼓の達人」のような音楽ゲームをやってみると、普段はそうしたイベントに参加しない男性の方でも盛り上がるそうなんです。まだまだスケールは小さいですが、そういった動きも盛り上げていきたいですね。

――老人介護施設で行われるレクリエーションの中には、小さな子どもがやるお遊戯のようなものがありますが、そうしたものを嫌がる方もいると聞きます。そう考えると、ゲームのようにみんなで楽しめるものは効果的ですね。

バロ そうなんです。それに、私が知る限り、他のeスポーツ先進国ではこういった動きはまだありません。ですから、eスポーツがヘルスケアと連携する流れが加速していくと、日本独自のコンテンツを作ることにつながり、ゆくゆくは海外に輸出していけるようにもなるのではないかと思っています。