「健全な発展」のためにガバナンス整備を

――その他、日本でeスポーツを普及していく上での課題は何でしょうか。

KPMGコンサルティング コンサルタントの園田玲於氏
KPMGコンサルティング コンサルタントの園田玲於氏

園田 法律的な面もありますが、今の段階ではガバナンス面が未整備なことも普及の大きな課題です。もともとeスポーツは年齢的に若い選手が多いですし、日本の場合はチームや組織自体もまだ若いですよね。そのため、透明性が担保されておらず、企業側としては資金を投下しづらいという声をよく聞きます。日本ではなく海外のチームに投資をしている日本企業もある状況です。

バロ もちろん日本のeスポーツチーム・組織でもちゃんとしているところはありますが、大半はまだガバナンスが未整備で、契約関係があいまいなこともあります。ただ、KPMGの親会社であるあずさ監査法人はガバナンスの専門家ですから、その知見も活かしてeスポーツ界のガバナンス向上に貢献していきたいと考えています。ガバナンスが整備されていけば企業としても投資がしやすくなっていくはずなので、日本のeスポーツはそうやって健全に発展していくことが重要なのです。

――「健全な発展」が重要ということは、例えばスポーツベッティングとの関連性についてはどうお考えでしょうか。

バロ 今、米国ではプロスポーツとベッティング関連企業の提携が相次いでいます。ただ、こと日本のeスポーツがベッティングと関係していくことについては、否定的とまでは言いませんが時期尚早だと考えています。韓国の場合、2010年頃にeスポーツで八百長事件が起き、業界全体が大きなダメージを受けました。そういった事例を見ると「守りのビジネス」の観点が足りていなかったと感じます。だからこそ、日本の場合は我々のような存在がガバナンスを整備するところから支えていきたいと思っています。

「本当の盛り上がり」につなげるために仲間を増やす

――ここまで日本のeスポーツの課題や、発展した先に見える未来などについてお話を伺ってきましたが、今後eスポーツをビジネスとして成長させる上で、具体的に必要なことは何でしょうか。

園田 鍵になるのはeスポーツの大会・イベントの数を増やすことだと思っています。大会やイベントを実施すると、メディア露出が増え、スポンサーがつき、そして人が集まります。人が集まるとデータを取得することができ、そのデータはゲーム関連企業にとっても有益なものであり、ビジネスチャンスにつなげることもできます。eスポーツのエコシステムを構築するためにも、KPMGとしても大会・イベントの企画に関わっていきたいという思いを持っています。

バロ eスポーツ発展のポイントの一つに「地域への密着」があると考えているのですが、eスポーツの大会・イベントを増やしていくことは地域密着にも関係していきます。例えば娯楽が少ない地域で積極的にeスポーツの大会・イベントを開催していくと、若者や家族連れが楽しむことができますし、外国人観光客からの注目を集めることを期待できます。さらに、日本には年間稼動率が低いスタジアムやアリーナが多くあるので、そうした場所で大会・イベントを開催すると自治体の収入にもつながっていきますよね。

ヒョン・バロ氏(左)と園田氏
ヒョン・バロ氏(左)と園田氏

――日本に「eスポーツの街」を作っていくということですか。

園田 ええ。別の視点から話をすると、eスポーツチームには選手たちがひとつ屋根の下で暮らしながらトレーニングを積んでいるというチームも多くあります。ただ、都心の場合は家賃が高いですし、住居も狭いという問題があります。それであれば、チームごと地方に移住して安価で広いスペースのある家で暮らすということも選手に期待されています。eスポーツはオンライン上で開催する大会も多くあるので、移住することでプレーに支障をきたすこともありませんし、選手としても環境が改善されます。移住先の地域も、若者が増えるというメリットを得ることができます。

バロ 今日お話ししたように、我々としてはeスポーツには大きな可能性があると感じています。ただし、産業を創り上げていくということは1つの企業だけでできるものではありません。ですから、「仲間を増やす」ということを念頭に起きながら活動を展開していきたいですね。そうやっていくことで、本当の盛り上がりにつなげていくことができると考えています。

 KPMGコンサルティングのヒョン・バロ氏は2019年1月26日、東京で開催されるスポーツビジネスイベント「SAJ2019(スポーツアナリティクスジャパン2019)」のセッション「eSports最前線~世界の現場では、何が起きているのか?!~」に登壇予定。