スポーツ界に一石投じる取り組みをしたい
チケットが完売した2018年12月の「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」ですが、そこで感じた課題はありますか。
太田 大会の運営には改善の余地があります。もっとプロフェッショナルになれます。あとは会場の規模です。今後、放映権で稼ぐビジネスモデルを採るのか、チケット収入を拡大するビジネスモデルにするのか戦略が必要ですが、今年はできれば2018年大会よりも大きな会場で開催する方針です。
というのも、2018年大会を開催した東京グローブ座は約700席しかなく、私だけで100人ぐらいの方からチケットをなんとか工面できないかと尋ねられました。心苦しい一方で、2年ぐらい前まではチケットを何十枚配っても誰一人来てくれなかったことを振り返ると、ここまで価値を高められたことには感慨深いものがあります。
大会会場の規模感ですが、どの程度を目指していますか。例えばBリーグのように3000人以上でしょうか。
太田 そこまでは行きたいですね。別競技の関係者が見て、「あんな選手の顔が見えないでルールも分かりにくいフェンシングであそこまでやったのか」と思ってもらえるような場所で開催し、スポーツ界に改革を進める風潮が出てくるとうれしいです。
私たちはフェンシングの改革に取り組んではいますが、スポーツ界に一石を投じるような取り組みをしたいのが本音です。フェンシングのように競技人口が1万5000人に満たないマイナースポーツの協会でも、努力によっていくらでも変えられることを証明したいのです。
今年の全日本フェンシング選手権大会では、何か新しい取り組みをされるのでしょうか。
太田 これまでも1日で全種目の決勝戦を行う「決勝集約型」でやってきましたが、今年の大会では準決勝と決勝が約1カ月間空くスケジュールになります。そうすると決勝進出者6カード12名の関係者は現地に応援に行きたくなったり、もしくは生放送をパブリックビューイングで観戦したくなったりします。テレビ局も取材に来たりするでしょう。
そうやってメディアの露出が増えると、地元の子供たちがフェンシングをやりたくなるという好循環が生まれます。東京のキー局の放送だけだとそこまでの効果はありませんが、地方局とキー局をうまく組み合わせると露出が高まります。「この選手が出るから見に行く」ということになって、予選会場から試合を見に行くファンが出てくるとうれしいです。