「フェンシング・ビジュアライズド」を東京五輪で
2018年12月に国際フェンシング連盟の副会長に就任されましたが、日本のフェンシング会に何を還元できますか。
太田 フェンシングのルールに関する情報を含めて、何らかの変更に対して発言力が強くなるのはポジティブな変化でしょう。しかし、それによって日本に有利なことをする考えはありません。フェンシングをグローバルに発展させるには、何が必要かを考えていきます。
スポーツビジネスを発展させる上で、「スポーツテック」はその鍵の一つだと思います。期待感を聞かせてください。
太田 東京五輪の開催が決定した2013年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会(開催:アルゼンチン・ブエノスアイレス)で、我々は「テクノロジーを駆使した最高のオリンピックにする」と宣言しました。しかし、現状を見ているとあまりとがったものが出てきていません。
我々はスポーツテックとして、フェンシングの剣先の軌跡を可視化する「Fencing Visualized(フェンシング・ビジュアライズド)」(電通、ライゾマティクスリサーチと共同開発)の東京五輪での導入を目指します。やはりこうした新しい取り組みがないと、「東京五輪はテクノロジーがいまいちだったね」で終わってしまうでしょう。
ここまでは協会の自己資金と情熱だけで作ってきたので、今後はこれを国際ルールに当てはめていったり、実際に五輪に実装できるのか、重要な局面に来ていると思います。正直、私もこのタイミングで国際フェンシング連盟の副会長になるとは思っていませんでしたが、実際になったことで実装のチャンスが出てきたと考えています。これからIOCや国際連盟で協議していきます。
一方で、五輪などの大きな大会で採用されたテクノロジーでも、より多くの場で使われないとビジネス上はあまり大きなインパクトを生まない可能性もあります。
太田 例えば、フェンシング・ビジュアライズドにしても五輪や世界選手権だけでしか使われないと広がりがありません。やはり、入り口としてトップアスリート向けに導入しても、それがより多くの人に届かないと「良いテクノロジー」とは言えないと思います。そうなると結局はコスト。導入コストをどのレイヤーで回収するのか、うまく設計した人が成功すると思います。