Jリーグ発展のために「外資への開放」と「人材育成」を
立石さんがベルギーに発ってからJリーグにも様々な変化が起こりました。例えば2019年シーズンからは外国人選手枠が拡大され、最大5人まで外国籍選手が試合に出場できるようになりました。こうした変化についてはどのように感じていますか。
立石 外国籍選手枠の拡大は、素晴らしいチャレンジだと思います。ただし、Jリーグがさらに大きくなっていくためには、外国籍選手枠だけを拡げるのではなく、外資系企業の参入も視野に入れていく必要があると思っています。英国のプレミアリーグが典型的な例ですが、日本のスポーツ界へ現在の国内からの投資に加えて他国からの投資が入って来ることで、競技力もエンターテイメントとしてのスポーツの魅力も同時に高いレベルに引き上げることが可能になるのではないでしょうか。もちろん、そこには十分な制度が準備されている事が条件になります。
では、立石さんはJリーグに対して何らかの危機感を抱いているということでしょうか。
立石 「危機感」と言われると僕の中にある思いとは少し異なりますが、「今後Jリーグはどうなっていきたいのか?」ということはしっかりと考えていかなければなりません。私自身もJリーグに育てられたと思っています。おそらく、私以上にJリーグ関係者は日々「危機感」を抱えながら、次の手を考えていると思います。
今のままでもサポートしてくれている方々はそう簡単に離れないでしょうし、Jリーグはリーグとして継続し続けていけると思います。実際、欧州にも素晴らしい選手たちを輩出していますし、欧州5大リーグ(英国、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス)からは少し落ちますが、ベルギーやオランダ、ポルトガルといった国と比べても遜色のない役割を担っているリーグだと思っています。
ただ、欧州5大リーグと肩を並べるようなリーグになっていきたいのであれば、今のままでは難しいだろうということです。なぜなら、現時点でのフットボール界の成熟度が、どうしても欧州とアジアではまだ違うからです。つまりJリーグだけでなく、アジア全体のレベルを引き上げる事、そしてその頂点にJリーグがあり続ける事が不可欠です。現在のアジアの成長スピードを考えると、その日もそう遠くはないかもしれません。
Jリーグのさらなる発展のためにも、STVVのようなクラブが日本人指導者や経営者を育成することが重要だということですね。
立石 今後はJリーグに外資が入ってくる流れが出てくることになるでしょう。そのときフロントサイドにも世界と戦える日本人がいなくてはなりません。そうしなくては、日本のクラブは外資に“喰われて”しまうことになる。しかしリーグの成長のためには外資に開放することも必須です。「人材育成」と「開放」は両輪をなすものなので、優秀な人材を育てることで、恐れずに外資を入れていけるようにすることがとても大事だと思っています。
STVVを通して日本サッカーに好影響を与える
クラブとして、個人として今後の目標を教えてください。
立石 ベルギーのリーグにはG5と呼ばれる5つのビッグクラブがあり、それらは我々の3倍ほどの予算を持っています。G5と比較するとSTVVはスタジアムも小さいですから、勝負どころをしっかりと見極めないといけないとも思っています。それはどこかと言うと、やはりスポンサーとともに今までにないプロジェクトを創造し、取り組むといったところだと思います。そこにも力を入れていき、G5に太刀打ちできるようにしていきたいと思っています。
個人としては、先ほども話しましたが、STVVを通して、日本サッカーに好影響を与えていくことを目指しています。我々がSTVVを買収した理由はそこにありますから、原点を忘れずに、このクラブで多くのことを学び、日本に還元していきたいですね。