スタジアムやアリーナにいかに人を集め、リピーターに醸成するか――。これはあらゆるスポーツクラブにとって永遠のテーマだ。この問題に相対する上で大きなヒントとなるのが、BリーグNo1の集客力を誇る「千葉ジェッツふなばし(以下、千葉ジェッツ)」の代表取締役社長・島田慎二氏が実行した「選挙をモチーフにした集客戦略」と「リピーター醸成のためのマネジメント方法」だ。その方法が明かされた「スポーツビジネス産業展」(主催:リードエグジビションジャパン、2018年2月21~23日)における同氏の講演の要旨を、談話形式でお届けする。
千葉ジェッツふなばし代表取締役社長の島田慎二氏。「選手も含め、集客ができなければ我々の幸せはない」ということを徹底的に浸透させていったと話す
千葉ジェッツふなばし代表取締役社長の島田慎二氏。「選手も含め、集客ができなければ我々の幸せはない」ということを徹底的に浸透させていったと話す
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集客はあらゆるビジネスの根幹

 千葉ジェッツはまだまだ小規模ですが、日本のバスケットボール界では3年連続で最も入場者数を獲得しているクラブです。ただはじめのうちは、無理に観客数を増やそうとはしていませんでした。一度だけ試合を観に来てもらうことは簡単ですが、また来たいと思ってもらうには、お客さんを満足させなくてはいけません。無理に集客をしてつまらない思いをさせたり、嫌な思いをさせてしまうと二度と足を運んでくれませんから、しっかりとお客さんを満足させるだけの状況を整えてから、集客をするようにしました。それが3年ほど前のことでした。

 集客はスポーツのみならず、あらゆるビジネスにおいて経営の根幹を成すものです。お客さんがたくさん来ればスポンサーが増えますし、グッズも売れます。ファンクラブの会員数も増え、試合会場も盛り上がります。集客がないと、すべてが真逆の状況になります。

 また、集客がなくては地域と対等に渡り合うことができません。地域に頭を下げて寄付を募るようにお金を集めるのではなく、自分たちの価値を認識してもらい、ビジネスとして地域と対峙したい。そういった思いを強く持っていました。そのためにも、集客を増やすことが必要です。こうしたことを社内に徹底的に浸透させ、「何が何でも集客をするんだ」という意識を持ってもらうところからスタートしました。

選挙から学んだ集客のための「見える化戦略」

 日本においてバスケットボールは“メジャースポーツ”と呼べる立場にはありませんし、メディア露出が多いわけでもありません。3年前には千葉ジェッツという名前を知っている人は千葉県内にもほとんどいませんでした。そうした状況でガムシャラにやったからと言っても集客できるはずがありません。

 そこで私がモチーフにしたのが選挙活動です。選挙は、出馬をして地域で名を売り、票を集めて当選し、そして地域で活動し続けるものです。この構造はスポーツクラブと非常によく似ていると直感的に思いました。そこで何名もの政治家の方に、どうやったら選挙で勝てるのかを聞いて回りました。そして、やはり選挙活動はスポーツクラブ経営にぴったりなモチーフであると確信しました。

 選挙において大切なのは、浮動票を固定票に変えることと、そのための準備です。政治家は地元の票田に日常的にアプローチして固定票のデータベースを作ります。どれだけの票を獲得できるのか、「見える化」をするわけです。そして、その数を増やすために地域の会合やイベントに顔を出していくというサイクルを回しています。こうした準備なくしては票を獲得することはできません。

 これはスポーツにおける集客も同様です。しかし以前の私たちはそうした準備ができていませんでした。地元のイベントに呼ばれれば選手を派遣していましたが、呼ばれたから参加していただけでした。次の試合のチケットが売れていないとなれば慌ててチラシ配りをするといった具合で、どれだけの観客が入るか試合が始まるまでわからないという状況が続いていたのです。漠然と戦略のないアプローチをしていたことを大いに反省し、浮動票を固定票に変えるために早めのアクションを取っていくようになりました。

集客は個人戦ではなく団体戦

 選挙では、政治家だけではなくその周囲で多くの人が動き、支えることで票を集めます。集客も同様で、個人戦ではなく団体戦で臨まなくてはなりません。こうした思考を社員に浸透させ、集客に対する動き方をシフトさせていくことから始めました。それまではチケット担当者がチケットの売り上げを増やす動きをし、営業担当者であればスポンサー収益を増やすために奔走するという具合に、各担当者が別々のKPI(key performance indicator)を設定していました。

 つまり集客をするのではなく、自分のタスクにフォーカスしていたのです。それを、イベント担当者であればそのイベントが集客のための機会創出となるか、SNS担当者であればその投稿を見たお客さんがチケットを買ってみたいと思うかどうか。総務であっても、経理であっても、会社に属しているすべてのスタッフが、集客を最大の目標とするようにしたのです。

 そうした動きを統括するのがチケット担当者です。以前は「チケットを買ってください」と頭を下げて地域を走り回っていたチケット担当者ですが、ただ走り回るのではなく、チケットを売るための戦略を立案し、各担当者に指示を出して票田にアプローチを仕掛けていき、プロセスを管理する。その精度を高めるためにPDCA(plan-do-check-act cycle)を回し続けていくという役割を与えました。これは非常に重要なポジションですし、こうした動きをしていくことが、固定客を掴み、安定的に集客できる一番の近道になると考えています。

 具体的な取り組みとしては、年間30試合ほどのホームゲームを一覧表にして地元のイベントと照らし合わせ、票、つまり集客数を読むということをやっていきました。初めの頃は精度が低かったものの、何度も取り組むことで質も高まっていきました。この繰り返しが、観客が増えていった要因だと思っています。

 こうした話をすると「うちでもやってみたけど上手くいかない」と、言われることがよくあります。しかしそれは、スタッフとのコミュニケーションがうまく取れていなかったり、PDCAを回せていない、あるいはチケット担当者が各スタッフをコントロールできていないといったことに要因があるのではないでしょうか。