5歳までの来場で、大人になってからの来場が58%増

 エンゲージメントにおいて、ひとつの鍵になるのが“子供世代”だと吉村氏は話す。

 吉村氏「子供の頃に野球の試合に連れていってもらった人は、野球のコアファンになる可能性が一般の人の3倍になるというデータがあります。また、別の調査では、5歳までに野球場に来て楽しい思いをした人と、10代で初めて野球場に来て楽しい思いをした人を比較しました。すると、5歳までに来た人の方が大人になってから野球場に来る回数が58%も多くなっています」

 「自身の体験として、今まで仕事上たくさんの球場や球団を見ていますが、幼少期に行った球場の記憶ほど、鮮明に覚えています。なぜ5歳までに行くことが大事なのかというと、10代になると音楽やファッションなど、さまざまなことに興味を持つようになり、野球以外への興味も増えてくる。興味が再度高まるのが、自分のお子さんを持ったときです。自分が子供のとき親にしてもらったのと同じように、子供にもしてあげようとなります」(同氏)

 こういったデータなどを踏まえ、いかに球場に足を運んでもらうか、レッドソックスでも子供への投資に力を入れているという。

 吉村氏「米国ではSTEM(ステム)教育といって、サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング・マス(算数)の4分野それぞれの知性を伸ばす施策を学校教育で取り入れています。STEM教育と地域の学校、そこにレッドソックスをどう掛け合わせるかが重要です」

STEM教育のイベントもフェンウェイパークで開催している。子供たちが憧れる場で実践することで、将来のファンを醸成する取り組みだ
STEM教育のイベントもフェンウェイパークで開催している。子供たちが憧れる場で実践することで、将来のファンを醸成する取り組みだ
(図:FSG)
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 そして同氏は、米国でよく行われるという、“卵を上から落としても割れない箱を作る”という学校での課題をフェンウェイパークで実践した例を挙げた。同球場のシンボルでもある高さ11.3mの巨大な壁「グリーンモンスター」を使ってこの実験を行い、その後子供たちにレッドソックスの試合を観戦させた。グリーンモンスターという子供たちの“憧れ”をうまく活用した取り組みだ。

写真左側のレフトスタンドの高い壁が名物「グリーンモンスター」。高さは11.3m
写真左側のレフトスタンドの高い壁が名物「グリーンモンスター」。高さは11.3m
(写真:日経 xTECH)
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