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 技術的な課題とは別に、法制度面の検討も不可欠だろう。税制もその1つだ。

 EVの競争力の1つが「燃費の安さ」だ。一般的なHVが約6円/kmであるのに対し、EVは約3円/kmと安い。

 だが、この差は現行のガソリン代を前提にした場合だ。ガソリン価格の約半分は揮発油税などの税金が占めているため、税制次第で競争力は変わる。

 現在、道路保守などの財源はガソリンへの課税に頼っている。EVの普及率が高まれば、EVの充電などへの課税がテーマとして浮上してくる可能性がある。ある意味、EVとは“税逃れ商品”なのである。仮にガソリン並の税が課されれば、EVの燃費上の優位性はなくなる。

石油消費へのインパクトは小さい

 様々な課題はあっても、長期的にEVシフトが脱石油につながるとすれば、エネルギー安全保障上の意義はあるだろう。EVシフトはエネルギー供給にどの程度のインパクトがあるのだろうか。

 IEA(国際エネルギー機関)が11月に発表した年次報告書「世界エネルギー展望(World Energy Outlook)」の2017年版は、2040年に世界のEV保有台数は2億8千万台まで膨らむと予測している(現在の世界の自動車保有台数は約13億台)。

そして、日量250万バレルの石油消費の削減効果があるとしている。だがこれは、日量9200万バレルという現在の世界の石油消費量の3%にも満たない。

 IEAはEVの最大普及シナリオとして9億台に達するケースの試算も行っている。このケースだと単純計算で日量800万バレルの削減になり、現在の石油需要の9%弱に相当する。世界の自動車保有が現在の13億台から増えるとしても、2040年にEVが9億台というのはかなり大胆な予測と言えよう。そこまで普及したとしても、石油消費を大きく抑えられるわけではないのだ。

 そもそも、EVシフト効果のターゲットとなっている自動車燃料用の石油消費は全体の35%程度しかない。石油消費の多くはプラスチックや薬品などの石油製品や、ボイラー燃料などの産業用途である。これがEVシフトの効果が限られる大きな理由だ。

 しかも、35%の内訳は「ガソリン20%+ディーゼル15%」である。ガソリン車のほとんどをEVが置き換えたとしても、トラックなどの物流で使われているディーゼル車の代替まで実現できなければ、大きく石油消費を減らすことにはならない。一般的に、積載重量が重く、走行距離が長いトラックのEV化は容易でないとされている。

 自動車という商品は平均使用年数が約12年と長く、仮にガソリン車やディーゼル車の販売を禁止し、毎年のEVの販売台数が相当の勢いで増えたとしても、ストックとしての普及率がガソリン車やディーゼル車を上回るには相当の時間がかかる。即効性という面でも、EVシフトの効果は限られる。