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ビットコインにとっての8月1日の意味

 2017年8月1日は、ビットコインが1つの危機を乗り越えた日となった。この日、ビットコインの一部のクライアントソフトウエアに組み込まれた「UASF(User Activated Soft Fork)」と呼ぶ仕掛けにより、ビットコインのネットワークが機能不全に陥る可能性があった。その場合、仮想通貨取引所のビットコイン入出金やビットコインを活用した決済サービスが数日間かそれ以上にわたり使えなくなり、大きな損害が発生する可能性があった。

 蓋を開けてみれば、UASFの発動による混乱は未然に回避された(詳細は後述する)。その過程で、7月23日には、日本仮想通貨事業者協会(JCBA)に加入する仮想通貨取引所13社がビットコイン入出金を一時停止した(JCBA の発表文)。これはUASF回避のための手続き(後述する「BIP91」)に際して、一部のノードの裏切りや怠慢によりブロックチェーンが分岐して不安定な状態に陥ることを懸念したものだった。なお、後述のニューヨーク合意(NYA)に参加している取引所bitFlyerは7月23日にビットコイン入出金を停止しなかった。

 一方、8月1日にはビットコインから、「ハードフォーク」と呼ぶ後方互換製のない手段で分岐した新たな仮想通貨Bitcoin Cashが誕生した。本来のハードフォークはブロックチェーンのバージョンアップのための手段の一つなのだが、Bitcoin Cashの場合はSegWit仕様を取り入れるバージョンアップ(後方互換製のある「ソフトフォーク」)を拒否して、後述するビッグブロックの仕様を取り入れるためにハードフォークを実施した。このハードフォークによる分岐が永続的に続くと多くの仮想通貨取引所が認めたので、Bitcoin Cashは仮想通貨として扱われることになった。

 なお、Bitcoin CashはUASFとは直接の関係はない。むしろ混乱に乗じた新仮想通貨の発足といった方がいい。8月1日にはこのハードフォークの対策として、調べた限りではすべての取引所がビットコインの入出金を一時停止した。

 以上の経緯は、ビットコインの「分裂」としてニュースメディアで報道された。ここで注意したいことがある。「分裂」という言葉は、2017年7月の時点では主にUASFによる混乱の懸念を指す言葉として使われていた。ところがUASFは発動せず、それとは別に8月1日にBitcoin Cashが誕生したことから、8月以降はBitcoin Cashの誕生を「分裂」と呼ぶ論調が目立っている。つまり2017年7月の記事と8月の記事で「分裂」の定義が異なる場合があるので要注意である。なお、筆者も2017年3月時点で「分裂」とタイトルに入った記事を書いているが(「ビットコイン分裂阻止へ、『Bitcoin Unlimitedは新通貨』と取引所18社」)、ここでの「分裂」は後述するBitcoin Unlimitedによるハードフォーク懸念を指していた。

 ともあれ、8月1日のUASF回避により「ビットコインの懸念材料が1つ解決された」と多くの人々が考えた。この心理がビットコインの価格に反映し、ビットコインの市場価格は8月1日の終値2718.26ドルから8月17日の高値4484.70ドルまで65%も高騰した(仮想通貨市場の統計サイト CoinMarketCapによる)。なお、その後ビットコイン価格は8月21日まで下落を続けたが、その後の上昇より8月31日時点で4736.05ドルの高値を記録している。