防護措置の妥当性
次に、学会事故調報告書から、事故後の緊急防護措置と、追加的早期防護措置、長期的防護措置への移行について考えてみる。主な防護措置を列挙し、筆者の見解を表にまとめた(表1~3)。
表1の緊急防護措置(要旨引用p.56)に関しては、指示が後手に回っており、総合的に見ると不適切だったと筆者は考えている。2015年3月17日には、高い線量率(170μSv/h)が観測されたポイント31~33の地点に、住民が200人以上も自宅屋内に残っていた。事情がどうあれ、被曝回避のためには強制避難させるべきだった。その人たちに対しては注意深い被曝評価が必要である。
正確な外部被曝の積算実効線量の推定は不可能に近いものの、表2の追加的早期防護措置(要旨引用p.58)については、安全側の判断につながるように保守的条件で評価されている。被曝線量は、筆者が心配したほど多くなく、住民の避難努力が数字に表れているように思える。その後、政府は、長期的防護措置として、年間確実に20mSv以下の区域を「避難指示解除準備区域」、年間20mSvを超える恐れがあるため継続して避難しなければならない区域を「居住制限区域」、年間50mSvを超える区域を「帰宅困難区域」にしている。
表3は航空機による空間線量率測定(p.67)についての言及である。米国エネルギー省による航空機モニタリングのやり方を見ていると、日本の組織の測定に比べて要領が良く、押さえるべき要点をすべて押さえている。合理的・効率的で、有効な測定と評価を実施していたことに驚かされる。