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 現代の人々の価値観は、「モノ」から「コト」へと転換してきている。そのため今後の日本の経済発展は、いかにその需要を満たすかが重要なキーとなっている。スポーツと音楽はコト消費を促進する打ってつけのものと言えるだろう。そしてこの2つは、地方創生を実現するだけの力も持っている。

 今後この3つの分野はどのように絡み合い、相乗効果を生んでいくことになるのか。「スポーツビジネス産業展」(主催:リードエグジビションジャパン、2018年2月21日〜23日)において、日本トップリーグ連携機構代表理事会長の川淵三郎氏、コンサートプロモーターズ協会会長/ディスクガレージ代表取締役社長の中西健夫氏、衆議院議員/ライブ・エンタテインメント議員連盟会長の石破茂氏の三氏が登壇し、そのヒントが語られた。後編では3氏によるパネルディスカッションの模様を紹介する。なおモデレーターは日本テレビアナウンサーのラルフ鈴木氏が務めた。
左からモデレーターを務めた日本テレビアナウンサーのラルフ鈴木氏、コンサートプロモーターズ協会会長/ディスクガレージ代表取締役社長の中西健夫氏、日本トップリーグ連携機構代表理事会長の川淵三郎氏、衆議院議員/ライブ・エンタテインメント議員連盟会長の石破茂氏
左からモデレーターを務めた日本テレビアナウンサーのラルフ鈴木氏、コンサートプロモーターズ協会会長/ディスクガレージ代表取締役社長の中西健夫氏、日本トップリーグ連携機構代表理事会長の川淵三郎氏、衆議院議員/ライブ・エンタテインメント議員連盟会長の石破茂氏
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スポーツや音楽がユーザーのためにどうあるべきかを考える時代

 前編で紹介した三氏の講演では、スポーツや音楽などのライブ・エンターテインメントが持つ経済的なメリットに焦点が当てられたが、パネルディスカッションでは人々の心身に与える影響についてまず言及された。川淵氏は、スポーツが担う役割とそのために必要なことについて次のように話す。

「これからはAI(人工知能)の発達によって余暇が増えることが予想されます。そこでスポーツは重要な役割を担いますし、健康寿命の延伸や子供の体力を伸ばすことも期待できると考えています。ただしスポーツ嫌いの子供は少なくありません。そこで、スポーツが嫌いな子供でも喜んで取り組めるようなスポーツを創造していこうと考えています」

「例えばウォーキングサッカーというスポーツがあります。走ることやボディコンタクトは禁止されたサッカーで、サッカーをやったことがない人や、高齢者でもできるスポーツです。こうしたスポーツを開発すれば、おじいさんおばあさんが孫と一緒にプレーすることもできます」(川淵氏)

 スポーツが嫌い、苦手という人でも楽しめるスポーツを開発することで、人々の健康に寄与することができるというのだ。一方で中西氏は、ライブ・エンターテインメントは人々の精神面での健康向上を果たす力があることに触れた。

「今は病んでいる方が多い時代です。スポーツは仲間との連帯感を醸成し、癒しや喜びを得られるものですが、音楽もそういった効果を持っています。ライブに行くとフラストレーションの発散ができますし、汗をかき、気持ち良さを得ることができる。癒しを求められる時代にあって、音楽とスポーツにはそれに応える力がある。だからこそ、ライブやスポーツがエンドユーザーのためにはどうあるべきかを考える時代になってきているのだと感じています」(中西氏)

求められる価値の再認識

 では、これまで以上にスポーツや音楽を社会に浸透させていく上で課題となるものは何か。石破氏は「行政のマインドが変わること」だと指摘する。

「行政は“面白いからやろう”とはなりません。面白い話があっても“できません。なぜならば”となってしまう。しかしこれからは“モノからコト”の時代であり、スポーツやライブ・エンターテインメントを活用しながら地域の産業を興していかなくてはならない時代です。駄目な理由を考えるのではなく、“面白いから一緒にやりましょう”というマインドを、行政が持たなくてはならないと思っています」(石破氏)

 実際、行政とともにコトを起こそうとしても話が進まないことが多いと中西氏は嘆いた。

「例えばある施設を造ろうとしても、行政の担当者がすぐに人事異動でいなくなることもあります。また、アリーナではなく体育館を造るという感覚から脱することができず、話が擦り合わないこともあります。こういったことは日常茶飯事です。こうした課題を解決するためには、行政に任せるだけではなく、民間のエキスパートが入っていかなくては駄目だと感じています」(中西氏)

 一方で、学習指導要領に固執し過ぎていることが子どもの体力低下を引き起こしていると、川淵氏は指摘する。

「以前、文部科学省のある方に“子どもたちを強制的に走らせたり、同じことばかりをさせるのではなくて、子どもたちの能力に合った面白い遊びをさせ、体育の時間が楽しくなるようにしたらどうだろう”と話したら、“学習指導要領で定めたことをしなくてはならない”と言われました。こうした考えが子どもの体力を低下させているのだと思っています」(川淵氏)

 もちろん行政だけに非があるわけではない。川淵氏は「日本のスポーツ界は各競技団体が横串を入れて協力し、すべての競技を発展させていこうという考え方がまるでない」とも指摘する。スポーツと音楽は社会課題を解決する力を持つことは事実であるだけに、あらゆる立場の人々が、改めてその価値を認識することが求められているといえるだろう。

スポーツが、夢が、地域を変えた与論島の事例

 ライブ・エンターテインメントの価値を認識するためには、その効力に触れる必要がある。そこで川淵氏が紹介したのが鹿児島県の与論島にサッカー場が造られたという事例だ。

「9年ほど前に与論島のPTAの方々から要請をいただき、講演に行きました。そこで話したのはイタリアのカステル・ディ・サングロという街のことです。この街は人口5000人ほどなのですが、地元のチームがセリエBに昇格したことで1万人ほどを収容できるスタジアムを造りました。セリエBならばアウェーからも多くの観客が訪れるので経営は十分に成り立ちます。人口が同じくらいの与論島でもそうしたことができるはずだから、夢を持って欲しいということを伝えました」(川淵氏)

「とはいえ、そのときは本当に実現できるとは思っていませんでした。しかしそれから9年ほど経ち、本当に人工芝のサッカー場を造ってしまったのです。夢を持った人々が、困難な状況を突破するために多くの人を巻き込み、夢を実現するということは奇跡だと思いました。だから先日与論島に行った際には“次は与論島を日本で一番ウォーキングサッカーが盛んな街にしてください”とお願いしてきました」(同氏)

 スポーツが、そして夢を持つことが、地域を変える力を持つ。川淵氏はそのことを強く訴えた。

地域が総ぐるみとなり、独自のプロモーションを

 パネルディスカッションでは、ライブ・エンターテインメントを全国に浸透させていくためには具体的にどのように動いていくべきかについても言及された。石破氏が挙げたのは「産官学金労言」の連携を強めることだ。

「地域の商工会議所や商店街組合、役所、大学などの教育機関、地方銀行や信用金庫、労働組合、地元メディア。こうした地域に根ざした組織が総ぐるみになって活性化に取り組み、面白いことをやっていかなくては地方創生は成り立ちません。そこに対し、国は“ああせい、こうせい”と口を出さず、資金や情報、人材など、足りないものを提供していくことも必要です」(石破氏)

 これに呼応して中西氏は地方ならではのプロモーションの重要性を説く。

「今はSNSの発達によって情報を全国に発信することは容易になりましたが、その地方ならではのプロモーションをしていかないと、金太郎飴的にどこの地方も同じ情報を発信しているということになってしまいます。それぞれの地方には独自のメディアがあり、アイコン的な人物がいます。そうしたものや人を活用する術を考えていくことが、ビジネスチャンスにつながっていくのではないかと思います」(中西氏)