PR

「市民利用」の見方を変えよう

 これからは、国内にも沖縄市のような本格的なアリーナがどんどんできてくるのでしょうか。

大河 そう簡単ではないでしょう。沖縄市のように“理解がある”行政はまれで、どの自治体も資金に余裕がないのが実情です。初期投資が壁になっています。

 この壁を乗り越えるのには策が必要です。例えば、広島市のマツダスタジアム(スタジアム広島)のように市債を発行し、後の収益分から返済していくという方法があります。特に、地方の中堅都市ではこういった手段は有効かと思います。

 初期投資に対する見方を少し変える必要もあると思います。例えばアリーナ建設に50億~100億円がかかるとなったときに、その段階で「困難」ということではなく、アリーナがもたらすプラス要因に目を向けていただきたい。

 実際、アリーナがあることによって都市に人口交流が起き、インバウンド需要を取り込んだりすることで経済効果が生まれます。一般に行政側が重視する「市民利用」は、何人そこで運動したかが基準ですが、「何人試合を観に来たか」などスポーツの「観る」「支える」に関与する行動も市民利用と捉えると見方は大きく変わってきます。例えば、キングスは毎年10万人も集客し、経済効果を生んでいます。

 また、アリーナは何らかの災害が起きたときに防災拠点になります。先述の沖縄市アリーナのボックス席やVIP席は、防災拠点になったときに妊婦やご年配、病気の方々のニーズに応えられます。(これまでの体育館をベースにした)市民利用の考え方を変えていかないと行けないと思っています。

 Bリーグの興行はホームで年間30数試合しかありません。試合がない日にどうやって活用するかが重要ですが、どのようにすれば黒字化が可能になりますか。

大河 確かに、試合を開催しない“残りの9割”をどう使っていくかは大きな課題ですが、いろいろなやり方があると思います。例えば、スポーツクラブなど民間企業がアリーナを運営し、休日や夜間は民間で使って、平日は行政に貸し出すというやり方もあります。

 米国のアリーナの代表格であるマジソン・スクエア・ガーデンの場合は、“ハード”を運営している会社が、プロバスケの男女とプロアイスホッケーのクラブを所有しています。つまり、施設を運営している企業がプロチームも保有するという逆転の発想です。日本でも今後、このような事業形態を採る企業が出てくるかもしれません。

 いずれにせよ、アリーナの運営、そして事業収支にスポーツのリーグやクラブが関与していくことが重要です。この部分を行政に丸投げしているようでは進展はないでしょう。

 沖縄市の場合は官主体の官民連携ですが、これ以外にもう少し民間主体のアリーナが1~2カ所誕生すると、それが国内のモデルケースになっていくでしょう。ゼビオグループは青森県八戸市に多目的のアリーナ(2020年春オープン予定)を作りますが、初期投資の数十億円はゼビオが自前で拠出します。完成すると、平日は市民に貸し出して利用料を徴収します。市は数十億円の資金は拠出できませんが、もちろん利用料なら支払えます。

 Bリーグではこれまで、どちらかと言うとかつての実業団の延長で参入している企業が多いですが、今シーズンからDeNAが川崎ブレイブサンダースの運営権を取得して参入を果たしました。横浜DeNAベイスターズと同様、DeNAは投資の対象としてバスケットボールクラブを見ています。5年以内に自前のアリーナを建設したいとするなど、アリーナそのものをスポーツビジネスの核にしたい考えを持っています。ゼビオと同様、資金力を持った企業が自らのアリーナを運営することで、ビジネスの状況は変わってくると思います。

 ところで、2017-18シーズンは入場者数が前年比11.8%増の250万人と順調に伸びました。その要因をどう分析していますか。

大河 各クラブの経営努力が大きいと考えています。1年目は、2つのリーグが一つになったり、国際試合にも再び出場できるようになったりするなど話題性がありました。2年目は、Bリーグに対する認知度が深まったことや、チケット販売に対する各クラブの経営努力が奏功し、リーグとしてもそれを支援できたと思っています。

 女性と若い人たちを意識したブランディングをしているので、プロ野球やJリーグに比べてこうしたファン層を多く獲得できています。特にB.LEAGUE会員の女性比率は43.4%と高いです(編集部注:会員の平均年齢は35.4歳。Jリーグは41.6歳)。

横浜アリーナで開催された「B.LEAGUE FINAL 2017-18」の表彰式の様子。アルバルク東京が優勝した(写真:B.LEAGUE)
横浜アリーナで開催された「B.LEAGUE FINAL 2017-18」の表彰式の様子。アルバルク東京が優勝した(写真:B.LEAGUE)
[画像のクリックで拡大表示]

アリーナの収容力が足りない

>

 野球やサッカーよりも女性、若年層のファンを多くつかんでいることは、入場者数のポテンシャルとして掲げている年間500万人の達成に向けて好材料だと思いますが、課題はどこにあるのでしょうか。

大河 まず、「500万人」という数字ですが、プロ野球の年間入場者数が約2500万人、Jリーグが約1000万人ですが、試合数を勘案するとBリーグは36チームで合計500万人を動員する可能性があると試算しています。

 しかし、現在のアリーナでは最高でも300万人ぐらいで打ち止めになってしまいます。収容のキャパシティーがないからです。琉球ゴールデンキングス、千葉ジェッツふなばし、栃木ブレックスなどの人気チームの試合は既にほぼ満員で、2017-2018シーズンのB1の全試合の40.8%が満員状態です。つまり、もっと伸ばせる余地があるクラブほど満員になっているのです。

 例えば、琉球ゴールデンキングスが現在使っている沖縄市体育館の収容人数は立ち見を含めて3600~3700人ですが、仮に平均7000~8000人を動員して年間30試合とすると20万人を超えます。現在、千葉ジェッツは約17万人を動員しています。このように20万人規模を動員するチームがB1の半分を占めるようになれば、B1・B2合計で500万人に到達するイメージです。

 現状、Bリーグのクラブが優先的に使える本格的なアリーナがないことで、収益機会を逃している部分もあります。最もお客さんが集まるプレーオフは収益獲得のチャンスなのに、自由に使えるアリーナがないことがネックになっています。Bリーグのクラブが優先的に使える大きなアリーナがあれば、プロ野球の日本シリーズのようにホーム・アンド・アウェー形式で最大7戦勝負などの決勝戦を開催できたりします。