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変えるもの、変えないもの

 トップマネジメントの役割をレジリエンス経営とイノベーションの視点からまとめたのが図2である。レジリエンス経営は、折れない経営、逆境を乗り越える経営ともいわれる。経営環境の激変によって、これまでの自社の強みが全く通用しなくなったときに、いかに適応するかを重視する。グローバル経済に突入し、経営環境が短期間で変化する時代に即した経営理論である。

 図2に示したように、経営環境の変化に対し、トップマネジメントが持つ直接的な武器は短期的戦略である。変化した顧客のニーズに対応して新たな価値創造を実現するために、今ある経営資源を「選択と集中」することが短期的戦略である。

図2 レジリエンス経営とイノベーションの視点で見たトップマネジメントの役割
図2 レジリエンス経営とイノベーションの視点で見たトップマネジメントの役割
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 ここでは敏捷性が重要となる。経営環境が変われば経営判断も変わるので、朝令暮改もある程度はやむを得ない。短期的戦略を実施する場面だけを見れば、トップマネジメントが一貫性を欠くように見え、信用できないと感じられるかもしれない。

 しかし、トップマネジメントの役割は、短期的戦略の実行だけではない。その時に必要な経営資源がなければ「選択と集中」のやりようがないなど、短期的戦略には大きな制約があるからだ。ない袖は振れない。そこで重要になるのが短期的戦略の奥にある長期的戦略である。

 これは、将来起こり得る経済環境の変化を見越して多様な経営資源(イノベーションの種)を育成することだ。ここでは継続性が重要となる。具体的に経営資源を投入するイノベーション分野としては、人材、技術、製品、サービス、市場、地域性である。

 トップマネジメントの仕事は、ここでも終わらない。長期的戦略のさらに奥に「不変の経営」が不可欠である。これは、何が起きてもイノベーションを育む仕組みを堅持するという、トップマネジメントの確固たる姿勢だ。経営哲学といってもよいだろう。

大久保孝俊(おおくぼ・たかとし)
1983年3月住友スリーエム(現スリーエム ジャパン)に入社、磁気製品の開発を担当。1987年7月、米3M社メモリーテクノロジーグループ研究員。1999年10月、山形スリーエム デコラティブ・グラフィックス技術部長。2003年9月、米3M社アジア・太平洋地域担当シックスシグマ・ダイレクター。2005年6月、米3M社コーポレートリサーチ研究所技術部長。2007年6月、住友スリーエム執行役員。2009年8月、スリーエムジャパングループ(当時は住友スリーエム)のビジネスプロセスの全体最適化を担うCPOに就任。