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 今回から始める「個の設計編」では、適切なマネジメントやシステムが整えられた環境を有効に活用できる個(マネジャーと部員)とはどのような人なのかを、個の行動・態度に焦点を当てて考えていく。

 脳は約1000億個の神経細胞が互いにつながり合い、回路(ネットワーク)を作ることでさまざまな機能を発揮する。神経回路を柔軟に変化させて土台を完成する時期を感受性期(臨界期)という。この時期を過ぎると、その後は発達しにくい機能もある。つまり、脳神経のネットワークが発達していく段階で、多くの行動や態度といった資質が決定されるのだ。逆から見れば、脳神経のネットワークがほぼ完成された後では、個の行動・態度は変わりにくいとされる。

 ただし、脳には「可塑性」(脳神経のネットワークが生涯にわたり変化すること)もある。このため、学習や訓練によって行動・態度に関する新しいネットワークが再構築できる可能性はある。

創造的な仕事に必要な資質とは

 図1に、「イノベーションの設計図 個の設計編」の概要を示した。3つの視点で構成されている。感受性期を過ぎると、その後のトレーニングでは発達しにくい「『人を動かす』ための資質」、感受性期後でもトレーニングで発達させられる「情熱を伝える力量」、そして、人間の本質と、会社との労働契約から不変的であると考えられる「変化を躊躇させる『迷いを解く』鍵」である。今回は、1番目の「『人を動かす』ための資質」を解説する。その資質は4つある。

図1 イノベーションの設計図(個の設計編)
図1 イノベーションの設計図(個の設計編)
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  • [1]誠実であるとともに強固な倫理原則を維持できる資質
  • [2]理屈に合わないことに対する不快感を持つ資質
  • [3]協力することに対する快感を持つ資質
  • [4]相手の心の中身を推察する資質

 「資質」という言葉を使ったのは、これら4つは、会社に入った後(感受性期を過ぎた状態)のトレーニングでは容易に獲得できないからである。その理由を、脳科学の視点から以下で説明しよう。