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 この中で最も重要なのが、玉石混交の多数のアイデアに含まれる「玉」である。後に採用される「玉」のアイデアは、マネジャーが部下に対して頭ごなしに「考えろ」と強制しても出てくるものではない。数合わせに「石」ばかり出てくるようでは意味がない。担当者が時間を使って必死に考えないとダメだ。これには能力だけではなく、やる気と自主性が不可欠なのである。

 では、いかにしてやる気と自主性を持った部下を育てればよいのだろうか。筆者は、マネジャー候補の部下とこんな話をよくする。
「君は今、マネジャーの指示に従う立場だが、どうすればマネジャーが部下のやる気を引き出せるか知っているはずだ」
「はあ」
「今、君の上司としてマネジャーがいるよね」
「はい」
「ならば、そのマネジャーをよく観察しなさい。彼が君に何か指示をする。君が快く『イエス』と言える場合と、納得できないまま『イエス』という場合があるだろう? 納得できなくても『イエス』と言うのは上下関係があるからだよね。でも、渋々『イエス』と言っている場合、君はその仕事に本気になって取り組めるだろうか?」
「難しいです」
「ならば、マネジャーが何と言ったら部下がやる気になるか、君は知っているはずだ」

 つまり、上下関係を笠に着て指示しても、部下のやる気も自主性も引き出せない。マネジャーは部下の能力に心底期待し、信じることで部下のやる気と自主性を引き出すことが大切なのだ。

 ちなみに私は部下に対して、こう話すことが多い。「私はこれがベストだと思っている。だからこれを君にやってほしい。しかし、もっと良いやり方があるかもしれない。君にアイデアがあれば提案してほしい。君ならできるはずだ。新しい提案がなかったら、指示した方法でやってください」。

 すると、かなりの確率で目を輝かせながら新しい提案を出してくれる。もし、新しい提案がなくて指示した内容に取り組む場合でも、自分に対案がなかった結果なので納得度が違ってくる。

大久保孝俊(おおくぼ・たかとし)
おおくぼ・たかとし:1983年3月住友スリーエム(現スリーエム ジャパン)に入社。1987年7月、米3M社メモリーテクノロジーグループ研究員。1999年10月、山形スリーエム(現スリーエムジャパンプロダクツ山形事業所) デコラティブ・グラフィックス技術部長。2003年9月、米3M社アジア・太平洋地域担当シックスシグマ・ダイレクター。2005年6月、米3M社コーポレートリサーチ研究所技術部長などを歴任。2016年8月から現職。