―― インバウンド需要を見込んだ工夫はありますか。

アイスホッケー会場となる月寒体育会(写真提供:NTT)
アイスホッケー会場となる月寒体育会(写真提供:NTT)
アイスホッケー会場となる月寒体育会(写真提供:NTT)

大西 外国人観光客へのアピールという観点では、札幌を知ってもらうということもあって、アジアやオーストラリアから来日する4000人ほどの選手にAR(拡張現実)アプリを使ってもらいたいと考えています。

 初音ミクのクリプトン・フューチャー・メディアが札幌の会社ということで、今回のアジア大会向けに「雪ミク」というキャラクターを作っていただきました。ARアプリでは、雪ミクと一緒に写真を撮れるようにしています。選手が街を歩きながら、時計台などの観光地で雪ミクと一緒に写真を撮る。それをソーシャルメディアで発信してもらえると札幌を知ってもらうきっかけになると思っています。

 ほかにも、札幌には大きな地下街がありますが、地下街と地上の地図を対応付けた「地下地上透過マップ」も札幌市からの提案で開発しました。海外には大きな地下街があまりないので、慣れないと怖がる人が多いらしいのです。

個人個人のニーズへの対応を可能にするのがICT

―― VR技術を使ったカーリングのストーン目線映像は、なかなか面白い試みですね。これからVR技術は、どのようにスポーツに活用されていくと考えていますか。

小笠原 例えば、サッカーならば、ゴールキーパー目線でリアルタイムに試合を観戦できるというような応用は目指していくべき方向と思っています。現状のVRの取り組みは、ほとんどがリアルタイムの体験ではありません。でも、技術要素はそろってきているので、ゴールキーパーの目線で試合を体験するような環境は近い将来に実現できるのではないでしょうか。課題は、どれだけ遅延なく映像を提供できるかというところだと思います。

大西 VR技術をはじめ、ICTを用いた新しい視聴体験の可能性はこれから広がっていくと考えています。以前、西武ドームでマルチアングル映像の配信サービスを手掛けたとき、いわゆる「ぼっち観戦」、つまり1人で観戦するための動機付けになるという話がありました。スポーツをよく知っている人もいれば、初心者もいるわけで、例えば特定のチームのファンになりたての人はチーム目線の解説映像をスマホで見ながら観戦したい。そうした個人個人のニーズへの対応を可能にするのがICTではないでしょうか。

―― 大型国際スポーツイベントの開催に向けて、身体が不自由な人向けのICTを活用したアクセシビリティー技術なども重要になります。

小笠原 アクセシビリティーに関しては、例えば、オリンピアンやパラリンピアンと一緒に街を歩く「ジャパンウォーク」というイベントにNTTは参画しています。このイベントでは「ジャパンウォーク・ガイド」というバリアフリーマップを提供しています。バリアフリー施設や、注意すべきポイントなどを確認できる地図です。

 地図上に「多目的トイレ」の表示があったとしても、本当に自分が使えるかどうかは、実際に見てみないと分かりません。そこで、360度の多視点カメラでトイレの中を撮影して、中の様子を事前に確認できるようにする取り組みを進めています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックが開催される前に、都内のすべての施設に適用できることを目指していきたいですね。こうした取り組みを、サステナブルに提供し続けられる仕掛け作りが課題だと思います。