インフォストラーダスポーツなどで培ったグレースノートの正確なビッグデータ分析力に対しては、メダル獲得に弾みを付けたい世界各国の関連機関も熱い視線を注ぐ。

 同社は選手強化に取り組む国家機関などを対象とした分析サービス「Podium」も提供しており、英米仏やオーストラリア、ブラジルなど五輪で強豪とされる9の国や地域が契約中だ。日本も日本スポーツ振興センター(JSC)が2012年から導入している。

五輪強豪国が軒並み導入する分析サービスも

写真●選手強化に取り組む国家機関などを対象とした分析サービス「Podium」。五輪で強豪とされる9の国や地域が契約している(提供:グレースノート日本法人)
写真●選手強化に取り組む国家機関などを対象とした分析サービス「Podium」。五輪で強豪とされる9の国や地域が契約している(提供:グレースノート日本法人)
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 分析で用いるデータはVMTとほぼ同じもので、24時間365日世界中で行われている試合をモニタリングして集めたデータベースを活用する。世界数か所にデータ入力のための拠点があり、機械処理と人手によるチェックを組み合わせて正確性を担保している。

 必ずしも五輪種目にこだわらず、例えばクリケットやフリスビー、ドラゴンボートに至るまで、局所的でも人気があるプロスポーツならできる限りカバーしているのが特徴だ。ちなみに五輪については、近代オリンピックが始まった1896年の第1回からすべての試合結果を網羅している。

 JSCなどが使っている分析ツールはウェブベースで提供する。担当者は「代表選手それぞれの現在の状態はどうか」「競技単位で全選手の強さを俯瞰したらどうか」「他国のライバルの状態は登り調子か、それとも下り調子か」「このままいけば、次の五輪でメダルは取れる選手はだれか」といった視点でさまざまな分析を日々行える。

写真●スマック氏が来日したのはアジアスポーツ強化拠点連合の第1回国際会議出席のため。Podiumなどのツールの効果的な活用法を講演した
写真●スマック氏が来日したのはアジアスポーツ強化拠点連合の第1回国際会議出席のため。Podiumなどのツールの効果的な活用法を講演した
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 JSCの大東和美理事長は「2020年の東京五輪に向けてデータの活用について重要性が増している。Podiumによってデータ収集に費やす時間が大幅に削減され、 分析に多くの時間を割けるようになった。より良い判断をするうえで役立っている」と一定の評価を下す。

 Podiumを導入した国や地域で共通するのは、選手強化のための予算をどの競技のどの選手により多く振り分けるべきか戦略の立案をしやすくなったことだ。たとえば、強化選手と過去にメダルを獲得した選手について、五輪前の数年間でコンディションがどう増減したか比べられるなど、かゆいところに手が届く工夫があるおかげで、公平なデータを基準に冷静に結論を出せる。 担当者個人の「勘と経験」に左右されることはないし、知名度や印象といったあいまいな基準にも振り回されずにも済む。

 有名でなくてもメダル獲得の可能性が高まっている選手がいれば思い切って投資を決定できるし、今後成長が見込まれるマイナー競技も見つけられると関係者は口を揃える。ジュニア選手の中から、将来が有望な才能を掘り起こしやすくなったとの声も上がる。