米プレイガイド大手も採用するアルゴリズム

 横浜F・マリノスにダイナミックプライシングのサービスを提供するのが、2018年6月1日に設立されたダイナミックプラスだ。三井物産がプレイガイド(チケット販売代行)事業を展開するヤフー、ぴあと共同で立ち上げた。持ち株比率は三井物産が62.6%、ヤフーが34%、ぴあが3.4%である。

 代表取締役社長の平田英人氏は「国内のスポーツ分野でのダイナミックプライシングは、東北楽天ゴールデンイーグルスが2017年から自社で運用している。しかし、弊社のようなサードパーティーが提供する事例は、スポーツやエンタメ業界ではまだない」と語る。

ダイナミックプラスのビジネス相関図(図:ダイナミックプラスが作成)
ダイナミックプラスのビジネス相関図(図:ダイナミックプラスが作成)
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 ダイナミックプライシングの中核は、適正価格を予測するAI(人工知能)のアルゴリズムである。ダイナミックプラスでは、米neustarという会社が開発したアルゴリズムのソースコードの「永久使用権」「改変権」を購入し、日本仕様にカスタマイズしている。neustarのアルゴリズムは米国のプレイガイドで過半のシェアを持つTicketmasterも使用している。

 ダイナミックプラスは、ダイナミックプライシングを導入したチケットの販売額の手数料収入を収益源とする。売れば売るほど収入が増える、出来高モデルである。

価格吊り上げが目的でない

 ダイナミックプライシングに対する誤解の一つに「チケット価格の吊り上げが目的」という見方がある。しかし、8月1日の横浜F・マリノス対サンフレッチェ広島戦の例にあるように、実際には座席によってチケット価格は定価に対して上下する。

 本来の目的は「興行主の収益最大化」にある。例えば、需要が供給を下回る、つまり人気があまりない場合は価格を下げることで集客を増やす。一方、人気がある場合は価格を上げる。

 通常、需要が多い席のチケットを安い価格で販売すると発売直後に売り切れ、本当に観戦したい多くの人が購入できないばかりか、転売サイトなど再販(2次流通)市場にチケットが流れてより高額で転売されるようになる。こうなると、興行主にとっては機会損失だ。そこでダイナミックプライシングで人気がある席の価格を上げることで「高額転売」を抑止できる効果もある。

 米メジャーリーグのチーム(サンフランシスコ・ジャイアンツ)が2009年ごろにダイナミックプライシングを初めて導入した背景も、転売サイトのStubHubの普及にあった。正規ルートでチケットが売れ残っているのに、StubHubで正規より安価にチケットが販売されたりしたことに、興行主であるチームが危機感を抱いたのである。