ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手のフォークボールは被打率が非常に低いことが話題になりましたが、投球の軌道を3次元的に可視化すると、バッターが打つか打たないかを最終決定する「Commit Point」と呼ばれる地点で、ストレート(赤)とフォーク(緑)の位置に明確な差がないことが分かります。

MLBの「Baseball Savant」が公表している大谷翔平選手の投球データ。投球の軌道をグラフィックス化すると、バッターが打つか打たないかを最終決定する「Commit Point」の地点で、ストレート(赤)とフォーク(緑)の位置に明確な差がない。つまり、見分けがつきにくいことが分かる
MLBの「Baseball Savant」が公表している大谷翔平選手の投球データ。投球の軌道をグラフィックス化すると、バッターが打つか打たないかを最終決定する「Commit Point」の地点で、ストレート(赤)とフォーク(緑)の位置に明確な差がない。つまり、見分けがつきにくいことが分かる
(図:baseballsavant.mlb.com「3D Pitch Visualizations」)
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 STATCASTでは今後も新たな指標が公開されていくのでしょうか。

金沢 SABR Analytics Conferenceでは、野手のポジショニング、つまり守備位置のデータが「そのうち公開される」と聞きましたが、既に公開済みです。実際、STATCASTがポジショニングに与えた影響は大きいと思います。日本では、まだそこまでできていませんが・・・。

 内野手の守備力を評価する指標も作っているそうです。野手が守っているポジションに対して、どのような打球が飛んできて、それに対してどれだけアウトにできたか、という指標です。また、トラッキングシステムで捉えた打球速度、打球の方向、さらには打者の走力などから選手の成績を推計する計算式もできていると聞きました。

STATCASTによって膨大なデータが取得できるようになったことは、このカンファレンスにどのような影響を与えているのでしょうか。

金沢 チームの編成という観点では、従来は打率、出塁率といったスタッツや試合の結果を元にしてどの選手を獲得すべきかという話題が多かった。それが、バイオメカニクス、心理学、生理学などの専門家もこの世界に入ってきて、現象そのものを解析するスポーツ科学の領域の人たちがかなり多かったという印象を受けました。

 これによって、統計的な手法からの予測だけでなく、実際に「どのように打球角度を変えるか、そのためには何をする必要があるか」というトレーニングの領域まで踏み込んだ議論が起きています。

 例えば、現役時代にサイヤング賞を受賞したこともある元投手のエリック・ガニエ氏が登壇してピッチングについて議論するパネル・ディスカッションもありました。このように統計学者が研究発表するだけでなく、“現場の人”も参加して、STATCASTのデータをパフォーマンス向上に活用したがっていることを感じました。

 私が出演したNHK BS1の「ワールドスポーツMLB」でも、毎回データを扱うコーナーを設けています。打球速度、打球角度、投球の変化量が何センチといったデータを分かりやすく紹介すれば、視聴者のニーズに応えられます。もはや、セイバーメトリクスの指標だけでは番組が成立しないと考えています。