外部の力をうまく使う時代に

昨年、MLBでは「フライボール革命」が話題になりました。近年は強いゴロやライナーではなく、強いフライを打つように指導の常識が変化しつつあると聞いています。

金沢 フライボール革命の話題は今回も出ました。STATCASTの導入から年月が経ってデータが蓄積されたことで、「こういう打球を打てばいい」「そのためにはスイングをこうすべき」という正解が分かり始めてきました。

 そこで登場したのが、データを駆使して打者や投手を指導するコーディネーターが開設した「野球塾」のようなものです。これまでは、選手に対する指導はチームのコーチが担当してきましたが、もはや多くの選手に対して同じ指導では対応し切れません。もっとうまくなりたいと思っている選手に対して、個別にプロ選手を指導するのです。選手が頼りにするのが、チームのコーチだけなく外部の人という選択肢が出てきているのです。

 野球塾で有名なのが、ワシントン州シアトルにある「Drive Line Baseball」です。クリーブランド・インディアンスに所属するトレバー・バウアー投手が通って、フォームを改良して球速がかなり上がったという事例が出ています。

シアトルにあるプロ野球選手向けの野球塾「Drive Line Baseball」のWebページ
シアトルにあるプロ野球選手向けの野球塾「Drive Line Baseball」のWebページ
(図:Drive Line Baseball)
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 これは今、一般企業で起きているのと同様、外部化できるところは外の力を利用しようという動きです。もちろん、ロサンゼルス・ドジャーズ、ヒューストン・アストロズなど体力があるチームは内部に数十人単位でR&Dチームを作って、自分のチームが勝つための知見をためて“秘伝のタレ”を開発していく状況になってきました。そうすると、担当者が変わってもチームの資産として残ります。

 一方、資金力がないチームは外部の力を活用したり、知っている人に任せたりするというように、自前とオープンの両面戦略を採るようになっています。

MLBと比べて、日本のプロ野球チームにおけるデータ活用はどの程度まで進んでいるのでしょうか。

金沢 日本ではまだ、SABR Analytics Conferenceで議論されているような段階に到達していません。ただ、チームによっては独自の活動をしていて、日本ならでのは進化を遂げています。日米の最大の違いは、リーグがリーダーシップを取っているかどうかです。MLBではSTATCASTの全30球団のスタジアムへの導入を含め、機構側がリーダーシップを取っています。また、日本の場合は米国と比べ、専門家に権限を与えて、その領域の意思決定を任せるということが少ないと感じています。