問題はSmartCourtの導入のハードルが決して低くないことだ。初期費用として機材代など200万円程度がかかるほか、月額10万円のランニングコストが必要になる。海外では一般会員もSmartCourtを使えるようにしてコストを回収しているテニスクラブもあるが、吉田氏は「ビジネスのツールとして考えたいが、現状では投資分を売り上げでカバーできるとは考えにくい」と本音を漏らす。

 SmartCourtが導入実績を増やすには、コストダウンのほか、選手だけでなく一般プレーヤーにも上達へのモチベーションやヒントを与えてくれる“仕掛け”が必要になるだろう。

錦織選手の元指導者が手掛けた新技術

 2015年12月9日、米シリコンバレーのベンチャー企業TuringSense社がテニスの“テクノロジー革命” への参戦を表明した。同社は複数のウエアラブルセンサーをプレーヤーの体につけて360度の動きデータを取得し、バイオメカニクス(生体力学)の見地から解析することで、スイングの改善やケガの予防ができる「PIVOT」を開発した。

PIVOTを付けてサーブしている様子。「PIVOT Challenger Pack」という最小構成の場合、センサーを5個(1つはハブ)体に装着する(写真:TuringSense社)
PIVOTを付けてサーブしている様子。「PIVOT Challenger Pack」という最小構成の場合、センサーを5個(1つはハブ)体に装着する(写真:TuringSense社)
[画像のクリックで拡大表示]

 PIVOTの開発には、米フロリダ州にあるスポーツ選手養成学校のIMGアカデミーで錦織圭選手ら世界のトップ選手を指導した経験を持つニック・ボロテリー氏が協力した。

 ソニーのSmart Tennis Sensorなどがラケットやボールの速度といったデータを取得するのに対し、PIVOTは9軸センサー(それぞれ3軸の加速度/角速度/地磁気センサー)を内蔵した複数のウエアラブルセンサー(最小構成で5個装着)でプレーヤーのフットワークや体の使い方、肘や膝の曲げ角度を見える化する。そのデータをバイオメカニクスの視点で解析し、スイングの矯正およびケガを誘発する可能性がある正しくない動きについて修正を促すという。

TuringSense社が開発したPIVOT。9軸センサーを内蔵したウエアラブルセンサーである(写真:TuringSense社)
TuringSense社が開発したPIVOT。9軸センサーを内蔵したウエアラブルセンサーである(写真:TuringSense社)
[画像のクリックで拡大表示]

 TuringSense社はPIVOT の量産化に向けて、12月9日にクラウドファンディング大手の米Indiegogo社での資金調達を開始。2016年8月の出荷を目標にしている。価格は、例えばボロテリー氏のコーチ付きなどさまざまなプランがあるが、最も安い設定で449米ドル(早期購入で38%引き)である。

 スポーツ界の「実験場」であるテニスには、今後も技術を売りにした新規参入が相次ぐだろう。こうした“見える化競争”の次のフェーズで問われるのは、プレーヤーの目線で本当に役立つサービスかどうかだ。競技人口1億超のテニス界に、「iPhone」のような存在は誕生するのだろうか。